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田嶋大樹「1人が好き…人と関わると自分が傷つく」孤高の左腕を変えた「結婚の幸せ」とオリックスの“父親ローテ”秘話「それはもう妻のおかげです」 

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米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

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photograph bySANKEI SHIMBUN

posted2025/07/26 11:03

田嶋大樹「1人が好き…人と関わると自分が傷つく」孤高の左腕を変えた「結婚の幸せ」とオリックスの“父親ローテ”秘話「それはもう妻のおかげです」<Number Web> photograph by SANKEI SHIMBUN

サヨナラホームランを放った中川に抱きついて祝福する田嶋 

「僕、人間関係を勉強するのがたぶん、ちょっと遅かったんですよ」と田嶋は苦笑する。

「本来は義務教育の期間にみんな人間関係を勉強するというか、勝手に身についていくものだと思うんですけど、僕には野球があったので、野球でどうにかなっていたんですよね。たとえバカにされたり、いじめられても、野球で結果を出せば何にも言われなくなったんで、僕、コミュニケーションが要らなかったんです。球を投げたら、『あいつ、すげえ!』となって、野球が解決してくれていた。

 でもプロに入ったら、やっぱりそうはいかなくて。一からコミュニケーションを勉強しながらやってきたという感じですね。その中で一昨年ぐらいから少しずつ、自分ができる範囲で人と話すようにしてきました」

孤高の左腕を変えた「結婚」「家族」

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 昨年8月に結婚したことも大きな転機となった。今年のシーズン前にこう語っていた。

「楽しいですし、やっぱり1人じゃないのはいいですね。1人だと余計なこと考えちゃいますから。もちろん1人の時間も必要なんですけど、ずっと1人でいるのはなんかちょっと違うかな、と。1人はめっちゃ好きですけど、家でまで1人は、もういいかなって。

 20代前半までは1人が好きでした。人と関わると自分が傷つくから、あまり人と関わらないようにしていた。でも結婚を機に人と関わって……。僕は人と接するのが苦手なんですけど、奥さんとはすんなりと接することができたし、初めて会った気がしなかった。一緒にいてしんどくなかったんです」

 自身の変化を幸せそうに話していた。

 そして今年5月には第一子となる長女が誕生した。心境にも、生活にも、大きな変化があったと語る。

「家に帰ったらいろいろ子供の世話をするんですけど、それに集中するから、野球のことを考えなくて、それがいいメリハリになっています。やっぱり自分だけの野球じゃなくなったので、すごく活力になっています。今は1年でも長くやれたらいいなという心境に変わりました」

「妻や子供を幸せに…」180度変わった人生観

 以前は「野球はいつやめてもいいと思っている」と話していた田嶋が、まさに180度の転換だ。プロ野球選手としての自分の姿を子供の記憶に残したい、という理由ではない。

「僕はもともと、死ぬ時に『いい人生だったな』と思えるように生きたい、という目標のようなものがあって。今は、妻や子供にもいい人生にして欲しいなと思っています。そのために、僕が野球を頑張ること、野球をやり続けることによって実現できるものもあると思うので、やり続けて、みんなでいい人生になるように。それが今の活力です。

 タイトルとかはいらないんです。子供が産まれたときに、『もう僕はこれ以上何もいらない』と思うぐらい、それぐらい尊いものだと思った。だからもうタイトルとか、いくら稼いだとか、何勝したとか、そういうことじゃなく、妻や子供を幸せにできるように、プロで野球を続けられたらいいなと。だから1年でも長く続けようかなという思いが出てきました。

 僕自身のためだったら、もう野球は30歳ぐらいまででいい、という感じでした。それくらい頑張ってきた自負もある。でも家族のためとなったら、もうちょっとやり続けたいなという思いですね」

 純粋でまっすぐな人柄がうかがえる。

【次ページ】 田嶋を支えた“父親ローテ”の気遣い

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