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「僕のイメージでは打率10割です」V9巨人でなぜ長嶋茂雄は“特別な存在”だったのか? サインを見逃し罰金を命じられても「屁でもなかったはず…」
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長谷川晶一Shoichi Hasegawa
photograph byAFLO
posted2025/07/28 17:00
笑顔の三番・王、監督・川上、四番・長嶋。V9を達成した翌'74年に後楽園球場で撮影
入団直後の高田は一番を任されることが多かった。柴田勲が一番を打つときには、二番、三番、あるいはONの後を打つクリーンアップの一角となる五番も担った。
「一番は何も考えず、とにかく塁に出ることだけを考えればよかったけど、個人的には二番がいちばん好きでした。何も考えずに自由に打つよりも、ある程度の制約がある中でバッティングするのが楽しかったから。一番の柴田さんが塁にいると、“どうやって塁を進めようか”と考えて、牧野(茂)コーチのサインがなくても、柴田さんとの間で自由にエンドランをしたり、投手に球数を投げさせたり、あえて初球から打ったり、いろいろ考えるのが楽しかった」
サインをよく見逃して罰金を命じられていた
三番を打つ際にも「自分の後にはONが控えている」と思えばプレッシャーも軽減された。でも、「ONの後を打つ五番だけは嫌だった」と、高田は顔をゆがめる。
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「2死二塁になると必ず長嶋さんを敬遠して自分に打席が回ってくる。ONの後を打つのはプレッシャーが大きかったな。ONにもサインは出るんです。でも長嶋さんはよく見逃して、川上(哲治)監督から罰金を命じられていました。きっと、サインを覚えていなかったんだと思いますよ(笑)」
高田と同じエピソードを披露したのが、V5となる'69年に西鉄ライオンズからジャイアンツに移籍した柳田真宏(俊郎)だ。
「日本シリーズ直前になると湯島の旅館で合宿をするんです。ヘッドコーチの牧野さんがサインを出して、みんなでそれを確認するんだけど、長嶋さんはまったく覚えていない。いつも、“オレにはサインが出ないからいいんだよ”って言っていたけど、実際にはサインは出ている。本人が気づいていないだけなんです。それでも川上監督は笑っていましたけどね」
ささやき戦術を仕掛ける捕手に、まさかの放屁!
柳田によれば「罰金は3000円だったけど、そんな金額は長嶋さんにとっては屁でもなかったはず」という。「屁でもなかった」と言えば、柳田には「長嶋とオナラ」に関する忘れられない思い出がある。
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