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「タナベ! よく投げてるね!」「(タバタですけど)頑張ります!」長嶋茂雄監督が“最後に獲得した男”田畑一也のトレード人生「長嶋さんは神様ですから」
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佐藤春佳Haruka Sato
photograph byKazuya Tabata
posted2025/07/12 11:02
1996年、ヤクルトに移籍した田畑は憧れの長嶋監督とツーショット(本人提供)。後に長嶋巨人にトレードされることになろうとは
「スコアラー時代は長嶋さんとは全く顔を合わせていませんでしたし、選手と監督という関係ではたった半年しか一緒にやっていないので、自分のことなんか覚えていないだろうと思っていたんです。でもその時ははっきりとタバタと声をかけてくれた。タナベでも嬉しいですけどね(笑)。長嶋さんは神様ですから。あれは嬉しかったですね」
大監督たちとの出会いと学び
入団テストを経て1991年ドラフト最後の指名から始まったプロ野球。3度のトレードで4球団を渡り歩いた11年間の現役生活は、思えば沢山の出会いに彩られていた。ダイエーで最初に仰いだ田淵幸一監督から始まり、根本陸夫、王貞治、野村克也、若松勉、梨田昌孝、長嶋茂雄、原辰徳と錚々たる顔ぶれの指揮官と出会った。
「トレードって今いるチームを“出される”というより、獲得してもらうチームに“必要とされる”という意味の前向きなものだと思う。色々な球団を知り、色々な監督と出会い、そのおかげでずっと野球に携わったお仕事をさせてもらえている。本当にありがたいことです」
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今春から、故郷の富山県で開校したばかりの通信制高校サポート校「AOIKE高等学院南砺福光キャンパス」を練習場として、AOIKE高等学校の新たに創設された野球部で監督を務める。現在の部員は1年生7人だけだが、選手と向き合い土台からチームを作る充実の日々を過ごしている。
「野村監督や長嶋監督がされていたようなことは自分には真似できないです。でも一つだけ、振り返るとプロ野球で自分が今まで出会ってきた監督の共通点って明るさだと思うんです。野村さんは自分ではネクラだと言うけれど、本当はめちゃくちゃ明るい方。まして長嶋さん、王さん、原さんなんて言うまでもない。明るさとはイコール、ポジティブにチームを引っ張っていくエネルギーだと思う。だから自分もこれから、どんな時も明るく前向きな気持ちだけは忘れずにやっていきたいと思っています」
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