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甲子園の風BACK NUMBER
医者から「野球はもうできなくなる」と言われ…京都の“名門野球部”主将を襲った難病 逆境から挑む最後の甲子園「普通の生活は当たり前じゃない」
text by

沢井史Fumi Sawai
photograph byFumi Sawai
posted2025/07/09 11:01
京都の強豪・立命館宇治高の野球部主将を務める伊藤央太。4番で捕手とまさにチームの“要”の存在だが、昨年から突然襲われた病魔と闘っている
3カ月の間は激しい運動は厳禁。つまり、グラウンドに行くこともできなくなった。学校の体育の授業を受けることも禁じられたが、伊藤自身はこう前向きに捉えていた。
「自分はもともと身体が硬くて柔軟性がないと言われていたんです。激しい運動はできなくてもストレッチとか柔軟性を使うトレーニングをすることはできた。なので、それはそれで切り替えられました」
状態が上向く時を信じ、やれる範囲のことを地道に続けることだけを考えた。入院こそしなかったが、数週間に1度は病院で診察を受けながら、朝からいつも通りに登校。夏に向けて最もチームが活性する初夏の時期は、ひたすら学校と家を往復する日々を送った。
3カ月のブランクを経て…ようやくグラウンドへ
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グラウンドにようやく出られるようになったのは、昨年8月だった。
まずは軽いティー打撃やトレーニングなどで徐々に体を慣らし、少しずつ外の空気に触れることから始めた。対外試合は代打のみに絞るなど、出場機会をセーブしながら実戦感覚を取り戻していった。
加えて伊藤は主将としてもチームをけん引する立場でもあった。療養によるブランクがあるにも関わらず、伊藤に主将を任せ続けた理由を里井監督はこう明かす。
「実は前に他の選手が主将をしていた時期もあったんです。伊藤は何かがずば抜けているというより、やっぱり人間性(が主将続行の理由)でした。伊藤は大人ともちゃんと会話ができるので、選手たちや僕らの間に立ってチームを見渡せるんです」

