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甲子園の風BACK NUMBER
医者から「野球はもうできなくなる」と言われ…京都の“名門野球部”主将を襲った難病 逆境から挑む最後の甲子園「普通の生活は当たり前じゃない」
text by

沢井史Fumi Sawai
photograph byFumi Sawai
posted2025/07/09 11:01
京都の強豪・立命館宇治高の野球部主将を務める伊藤央太。4番で捕手とまさにチームの“要”の存在だが、昨年から突然襲われた病魔と闘っている
現在は全力で走ることも許可され、ようやく何かを気にすることなく全力プレーができるようになった。夏に向け、4番打者としても期待が高いが、4番という言葉に本人ははにかんだ笑みを見せながらこう口にする。
「自分は4番でも長打を期待されるバッターではないんです。勝負どころでしっかり1本を出すことが目標です。1年生の夏からベンチには入っていましたが、フルで出場させてもらえる夏は今年が最初で最後。
ウチには複数の投手もいますが、ピッチャーを良くするのも悪くするのも自分にかかっていると思うので、自分が少しでも良い方向に持っていけるリードを徹底していきたいです」
野球ができることは「当たり前ではない」
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灼熱の太陽の下で、いよいよ開幕する高校野球最後の夏。だが、伊藤にとって最後の夏は特別な夏でもある。
「病気になって、普通に生活することは当たり前じゃないと感じました。今、こうやって野球ができることに感謝しながらこの夏を過ごしていきたいです」
野球ができなくなるかもしれないという絶望の淵から約1年経った今、笑顔でグラウンドに立つ自分がいる。6月だというのにもう真夏のような威勢をあげている太陽は、傾きかけた夕刻になっても、いつまでも伊藤を照らし続けていた。
伊藤の本気の夏はこれから――。太陽が、そう告げているようだった。

