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協会離脱の白鵬が提案…「相撲グランドスラム」構想って実現可能? 世界で活躍“元力士”実業家のリアル評「可能性は十二分…でも怖さもある」 

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別府響

別府響Hibiki Beppu

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posted2025/07/02 17:00

協会離脱の白鵬が提案…「相撲グランドスラム」構想って実現可能? 世界で活躍“元力士”実業家のリアル評「可能性は十二分…でも怖さもある」<Number Web> photograph by BUNGEISHUNJU

相撲協会からの退職を発表した白鵬。今後は世界を舞台に相撲を広める「相撲グランドスラム」構想を進めていくという

「いまメジャーリーグでは大谷翔平選手が数百億円以上の契約を結んでいるわけじゃないですか。一方で、大相撲の世界の年収を考えると、横綱でも月給300万円×12カ月だから、4000万ぐらいですよね。そこに出来高みたいなものがついても1億円に届くかどうかという待遇なわけです。

 プロ野球では当たり前の1億円プレイヤーというのが、横綱でも難しいのが現状なんです。幕下以下は給料もない不安定な経済状況ですし、そういう要素を他の競技と比べてみたら、やっぱり子どもたちだって別の競技に夢を抱きますよね。もちろん待遇面だけではないけれど、そういう部分も真剣に考えていかないといけない時期に差し掛かっているのも間違いないと思います」

 この危機感は多くの力士たちにとって非常にリアルなものでもある。実際に元横綱の朝青龍も、田代さんの前でこんな風に怒っていたという。

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「あと10年もしたら大相撲なくなるよ。現役が500人くらいしかいないのに、辞めた力士の保障もできない。誰がそんなところに入るんだ――」

 伝統競技としての相撲の形を守りつつ、新たな世界への広がりをどう作っていくのか。それは白鵬だけでなく、大相撲界全体の持つ課題なのかもしれない。

「世界を舞台にすることで今以上に規模が大きくなれば、相撲はSUMOに変わっていく。そこでどういう変化をするのかというのは、率直に言えば怖い部分もあります。私自身も海外を含めて相撲イベントに携わることもありますが、そこにはやはり自分が育ってきたルーツに恩返しがしたい気持ちは少なからずあります。

 もちろん白鵬も相撲への恩返しの気持ちは大きいでしょうから、そこまで逸脱したことはしないとは思います。でも、日本以外を舞台にする以上は、多少の変化は避けられない。だからこそ今回のような動きを通じて、相乗効果で相撲界全体が盛り上がる気運になっていくと良いんですけどね」

日本と海外における「相撲」の違い

 一方で、今回の白鵬以外にも角界で結果を残しながら引退後に協会を離れ、別のフィールドで活躍する力士たちも意外に多い。特に前述のように海外で相撲や力士の持つ求心力は非常に大きい。田代さんもこう語る。

「海外の興行に携われば、金銭面以外の理由でも国内との違いに衝撃を受ける力士も多いと思います」

 そしてその「違い」こそが、現在多くのOB力士たちが海外を拠点に活動している理由でもあるのだという。

<次回へつづく>

#2に続く
あの「電撃引退」逸ノ城もいまアメリカに?…なぜ引退力士は海を渡るのか 海外興行参加の元力士実業家が感じた「SUMOと相撲」の“決定的な差”

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