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「妻との死別」を乗り越えて…なぜ名ブラジル人FWは33年も日本に住み続けるのか「それが私の生き甲斐だ」現横浜FCコーチのアマラオが激白 

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沢田啓明

沢田啓明Hiroaki Sawada

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photograph byToshiya Kondo

posted2025/06/27 17:03

「妻との死別」を乗り越えて…なぜ名ブラジル人FWは33年も日本に住み続けるのか「それが私の生き甲斐だ」現横浜FCコーチのアマラオが激白<Number Web> photograph by Toshiya Kondo

FCホリコシ時代のアマラオ。長年にわたって日本でフットボールに関わり続ける理由とは

「やはり、あの青と赤のユニフォームを見ると心が騒ぐ。でも、今は横浜FCの勝利を目指して最善を尽くすだけだ」

――6月28日には、味の素スタジアムで古巣と対戦しますね。

「現役時代の思い出がいっぱい詰まった愛着のあるスタジアムだけど、今度こそ点を取って勝ちたい」

今もっとも“推している”日本人はミトマだ

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――暁星国際学園での指導はいかがですか?

「高校男子にはA、B、Cの3チームがあり、私はBチームの監督を務めている。学校の方針はあくまでも学業優先で、生徒のほとんどはプロを目指しているわけではない。それでも素質のある生徒はおり、大学を経てプロになるケースも出てくるんじゃないかな。彼らは直接、私の現役時代を知らないが、とても素直で、アドバイスを真剣に受け止めてくれる。若者を指導をするのは、本当に楽しいよ。横浜FCでも暁星でも、基本的に日本語で指導している。長年、日本にいて、フットボール用語は全部知っているからね」

――日本人プレーヤーの印象についても聞ければと。対戦した選手の中で最も高く評価するのは?

「さっきも話した通りシュンスケはもちろん、エンドウ(遠藤保仁)、ケンゴ(中村憲剛)ら中盤に素晴らしい選手がいた。敵ながら、彼らのインテリジェンスに富んだプレーを見るのが好きだった」

――最も苦しめられたDF、目に留まったFWは?

「空中戦に圧倒的に強いアキタ(秋田豊)と、屈強で激しいプレーをするナカザワ(中澤佑二)だね。FWだとタカハラ(高原直泰)の決定力が素晴らしかった」

――1992年に日本へ渡ってから選手として17年、さらには指導者としても10年以上を過ごしてきた。日本のフットボールの発展をつぶさに眺めてきたわけですが、欧州各国のリーグで多くの日本人選手が活躍し、日本代表がW杯常連となり、なおかつグループステージを4度突破する姿を予想していましたか?

「いや、全く(笑)。90年代初めと比べると、隔世の感がある。でも、私は日本人が真面目にコツコツと努力することを熟知しており、その姿勢がこれを可能にしたのだと思う。日本のフットボールの急激な成長と発展は、長く日本でプレーし、現在も指導者の仕事をしている私にとっても大きな誇りだ。ちなみに現在の日本代表選手で最も高く評価するのはスピード、テクニック、判断力が素晴らしいミトマ(三笘薫)だ」

――今の日本代表選手たちは、W杯優勝を目標に掲げています。このことをどう思いますか?

「プロなのだから、一番高い目標を持つのは当然のこと。日本人選手も、謙虚さをかなぐり捨てて、このような野心を公に口にするようになった。素晴らしいことだと思う。ただし、上には上がいる。これまでと同様、謙虚に努力を積み重ねてほしい。私も、引き続き日本のフットボールの発展の手助けをしたいと考えている」

妻と死別したが…三女と日本に住み続けるつもりだ

――最後に……現役引退後も指導者の仕事をしながら日本に住み続けて、30年超の時を経ました。これだけの長い期間、日本にいる理由とは何なのでしょうか?

「日本人選手を指導して日本のフットボールに貢献することが、生き甲斐となっている。妻とは死別し、長女と次女は成人してブラジルに住んでいるが、11歳の三女は日本での生活が長く、日本が大好き。ずっと日本に住みたい、と言っている。だから、僕も彼女と一緒にまだまだ日本に住み続けるつもりだ」

 第1回から取り上げていったように――アマラオはFC東京のみならず、日本のフットボール全体のレジェンドであり、その存在は我々にとって大きな財産だ。自身の日本での成功の大きな要因として「謙虚に努力を続けたこと」を挙げたように、謙虚にして誠実な人柄が強く印象に残った。第1回からつづく〉

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「日本の環境にガク然。ブラジルへ帰ろう」ラモス瑠偉がいなければ…“FC東京のキング”が苦悩した若き日「ディスコに連れ出してくれたんだ」
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