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「2年前なら…でも今は藤井さんに追いつけてません」永瀬拓矢32歳、藤井聡太22歳との実力差を包み隠さず語る「準備の差としか言いようが」
text by

大川慎太郎Shintaro Okawa
photograph byKeiji Ishikawa
posted2025/06/22 11:02
王将戦、名人戦と2つの2日制タイトル戦で藤井聡太と相まみえた永瀬拓矢。今感じることとは
「対藤井戦の序盤では自分の認識が浅い形を指されることが多かったんです。たまたまだと思っていたんですけど、そうじゃないことがよくわかりました。これはもう準備の差としか言いようがない」
その時、私は思わず「永瀬さんだって序盤を凄まじく研究しているのでしょう?」と問うた。すると永瀬は落ち着いた声で返してきた。
「今は実力を伸ばす土台を作っている最中なので、ソフトでゴリゴリに研究はしていません。昔はヤマを張って深く研究していたんですけどね。相手の指してきそうな変化を深く掘り下げるのではなく、知識を全体的に均している感じです。結局、戦術面だけを重視しても強くなれないんです。ソフトを使いすぎると、自分の頭で考えることを邪魔してしまう。今はできるだけ自分で考えて、ソフトで肉付けをする感じです」
永瀬が「痛かった」と語る2つの敗戦とは
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シリーズが進むにつれて、永瀬の認識はより強固なものになった。
「第3局で後手の藤井さんは雁木模様から矢倉という私が想定していない新機軸を出してきました。これではっきりしましたね。結果的に先手番の第1、3局の敗戦が痛かった。第5局の先手番も千日手にしてしまいましたし」
藤井のスタイルの変化、進化を踏まえて、永瀬は具体的にどうするつもりだろうか。〈つづく〉

