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「大谷翔平から“ある提案”」投手電撃復帰の舞台ウラ…「3度目の故障は投手生命が奪われる」ドジャース監督が初めて語った「大谷の声を最優先に」の意味
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笹田幸嗣Koji Sasada
photograph byGetty Images
posted2025/06/19 11:04
現地6月16日、じつに663日ぶりの登板となった投手・大谷翔平
大谷が密かに行ってきた「実働10時間超」の過酷調整
そして、これまでは復帰へのリハビリ過程は球団が管理することを、声を大にして主張してきた指揮官が、こんなことを初めて言った。
「私たちも(二刀流の復帰調整は)初めての経験だ。だから大谷の声を最優先にしている」
ライブBPでの調整は基本、試合開始5時間ほど前に行われる。例えば試合開始が午後7時であれば、球場入りは正午過ぎ。前日がナイターでなくても大谷にとって貴重な睡眠時間は相当に削られる。その上で終了後にアイシングを施し、打者としての出場の準備をし、ナイターでの試合が終われば午後10時にはなる。球場での実働時間は10時間超。大谷の言う通り、ライブBPでの調整はまさに『ダブルヘッダー』同様の過酷さがあった。
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そして、サンディエゴでの調整を終えた大谷翔平から首脳陣へある提案があったという。関係者が説明する。
「大谷本人もオールスターまではライブBPを重ねる覚悟はあったようですが、ライブBPと試合出場を同時に重ねることは体力的に厳しいと感じたようです。そこで、ライブBPをメジャーの試合での登板へ切り替え、1イニングずつから始まり、イニングを増やしていく『実践リハビリ登板』はどうかと提案したのです。もちろん、投手陣が崩壊状態で負け試合だけでなく、勝ち試合でも野手が登板するような惨状を見て、その方が少しでもチームの助けになるのではないかという大谷本人の判断もあったと聞いています」
「最終決定はここ24~48時間で行った」
首脳陣にとってはまさに渡りに船。だが、今回の大谷のリハビリスケジュールは首脳陣の判断ではなく、全てが医療スタッフに委ねられていた。その親方がトミー・ジョン手術の執刀医であり、球団ドクターでもあるニール・エラトロッシュドクターだ。今春のキャンプでも大谷は順調に投手としての調整を進め、ブルペン投球では96マイル(約154キロ)の直球を投げるまでにステップアップしていたが、エラトロッシュドクターは投球シャットダウンの令を下した。関係者が言う。
「順調とは言え、そこまで強度を上げるのは時期尚早と考えたそうです。もし、3度目の故障となれば投手生命が奪われる事態に陥る。大谷は球団だけでなくメジャーリーグの宝でもある。医療部門の責任者として、それだけは避けなければならない。キャッチボールやブルペンでのスライダーの解禁が5月に入ってからになったのも彼の判断でした」
だが、今回はそのエラトロッシュドクターでさえもメジャーでの『実践リハビリ登板』にGOを出したという。ブランドン・ゴームズGMはその舞台裏をこう語った。
「本格的に『いける』と思ったのは今週に入ってから。最終決定はここ24~48時間で行った」

