「非情ですけど、右肩を狙った」中谷潤人は“ダーティ”すぎたのか？「中谷は右肩ばっかり見てた」敗者・西田凌佑が明かしたウラ側「棄権を決断した瞬間」 

「3ラウンドあたりからようやくボディも当たりだして、ボディ嫌がってるな、っていうのは感じとれた。3、4ラウンドと“おお、いいリズムになってきたじゃないか”と。このままいけば勝てるんじゃないかと。陣営は“いけるぞ”と。自信のようなものは持ってました」

「非情ですけど…」「中谷は右肩ばかり見てた」

　しかし、5ラウンドで風向きが変わる。西田の手数が減ったのだ。映像を目視して数えたため正確な数字ではないが、十分に振り抜いたといえる右のパンチは4ラウンドの37発に対して、5ラウンドが22発、6ラウンドに至っては13発まで激減した。数が減っただけでなく、ハンドスピードも明らかに落ちていた。

　なにかがおかしい。「なんでこんなに動きが悪いんだ」と武市トレーナーは訝しむが、その原因を特定するまでには至らない。

ADVERTISEMENT

　誰よりも早く西田の右肩の異変に気づいたのは中谷だった。

右肩を気にする素振りを見せた西田。中谷はその異変を見逃さなかった　©Takuya Sugiyama

「5ラウンドくらいから中谷選手も気づいてるな、って。肩を見てたんで。6ラウンドとかも腕を打たれて、効いたというよりも、腕がやばいと」

　右肩を狙われている。西田ははっきりとそう感じていた。5ラウンドに4発、6ラウンドに7発。中谷はガードを上げた腕や肩に左フックを打ち込んでいる。「非情ですけど、勝つためにそこを狙った」。試合直後の中谷のコメントだ。これも決してダーティではなく、ごくまっとうな戦略であることは強調するまでもない。

西田の右サイドを狙う中谷　©Takuya Sugiyama

　枝川会長は中谷の非情な攻めを“執念”だと解釈した。

「ホンマに最初から狙うてきて痛めたのか、痛めてから狙うてきたのかわからへんけど、西田は“肩ばっかり見てた”って言うんでね。そういう作戦もあるんだろうなと……。うちもこれから肩パンを、肩パンチを鍛えなあかんのかなと。それくらい中谷チャンピオンが勝つ執念を燃やしていたんだろうなと。我々がちょっと甘かったのかもわからない」

棄権を決めたウラ側「肩、外れました…」

　右目はほとんど塞がり、右肩も壊された。中谷が攻勢を強めた6ラウンドの後のインターバル。「もっと手出せ！」と叱咤する武市トレーナーに西田が言った。

「肩、外れました」

【次ページ】　棄権を決めたウラ側