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「長嶋さんは、あのときがいちばん苦しかったんじゃないかな」長嶋茂雄に松井秀喜が“現役引退”の電話…その時、何を言ったか?「巨人広報が泣いた日」 

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中村計

中村計Kei Nakamura

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photograph byJIJI PRESS

posted2025/06/05 06:01

「長嶋さんは、あのときがいちばん苦しかったんじゃないかな」長嶋茂雄に松井秀喜が“現役引退”の電話…その時、何を言ったか?「巨人広報が泣いた日」<Number Web> photograph by JIJI PRESS

松井が現役引退時、20年間で最も印象深いシーンに挙げた「長嶋監督と2人で素振りをした時間」。その真意とは

「個人的には行かせてあげたいだろうけど、立場的には苦しいですよね……。ただ、長嶋さんだって向こうでやりたかった人だからね。物にはまったく執着しない人だけど、ヤンキースのジョー・ディマジオのサイン入りユニフォームだけは家に飾ってたぐらいだから。そのニューヨークに自分の魂の入った選手が行くわけだから。最終的にいちばん喜んでたのは長嶋さんだったんじゃないかな」

 長嶋は松井のメジャー1年目にニューヨークを訪ねた。翌年も渡米する予定だったが脳梗塞で倒れ、かなわなかった。結局、長嶋が憧れのヤンキースのユニフォームを着た松井を生で見られたのは最初の年だけだった。

松井の言葉に涙が止まらなかった広報

 松井の引退を本人からの電話で知った長嶋は、安堵した様子で小俣にこう言ったという。

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「辞め方があいつらしくていいな。潔いよ」

 その松井は引退会見で「20年間で最も印象深いシーンは」と問われ、真っ先に「長嶋監督と2人で素振りをした時間」を挙げた。それをテレビで見ていた香坂は、涙が止まらなかった。

「彼は、本音を言わない、考えてることがわからない、ってよく言われる。でも、すっとあの言葉が出たからね。彼は本当は孤独だったと思うんですよ。人に頼らない、誰よりも自立した選手でしたから。でも名誉監督の愛情はしっかり受け止めていたんだな、と」

 プロの世界に飛び込んでから20年――。頑固で、ぶきっちょで、誰よりも誇り高い松井が少しだけ素直になった瞬間だった。

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