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ラグビーPRESSBACK NUMBER
「彼は本当にタフ」ヘッドコーチも脱帽…ラグビーリーグワン決勝 優勝の東芝エースが見せた“骨折したままMVP獲得”の衝撃「痛みはあったけど…」
text by

大友信彦Nobuhiko Otomo
photograph byYuki Suenaga
posted2025/06/04 17:01
実は準決勝の試合後に右手の甲を骨折していたという東芝のリッチー・モウンガ。それでも決勝では東芝の優勝に大きく貢献してみせた
そんな状態で、あのパフォーマンスを演じていたとは……だが実際、ミックスゾーンに現れたモウンガの右手は分厚く腫れ上がっていた。
「この大会は特別なもの。勝利の嬉しさはいつも変わらないよ。この日のために1年を通してみんなで努力してきた。チームメイトの働きは素晴らしかった」
右手の負傷について訊ねる。モウンガは表情も変えずに答えた。
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「神戸との準決勝の76分くらいだったと思う。右手の骨を折ってしまった。これは仕方ない。ラグビーではよくあることだし、その事実を受け入れて今週は準備して試合に臨みました」
準決勝の映像を見返したが、負傷した場面は明瞭には分からない。モウンガは痛がる素振りをまるで見せていないのだ。
重ねて訊ねる。オールブラックスやクルセーダーズ時代にも、同じようなケガをして試合に出た経験はありますか?
「右手を3回、左手を1回骨折したことがある。そのうち一度は試合の序盤で骨折したけどそのままずっと試合をした。その経験があったし、今回は決勝。試合に出るのは不可能じゃないと思い、出場を決めました」
「ちょっと痛さはあったけど…」
――プレーへの影響は?
「ちょっと痛さはあったけど、判断の面では何も変わらないし、プレーにも影響はなかった。トライの場面もアシストの場面も、何というか、ラグビーをしただけです。今まで何千回と同じような場面を経験してきたし、自分のカンに従ってプレーしました」
そうまでして試合に出ようと思うのはなぜでしょう? その問いには笑みをうかべて答えた。
「周りの人が喜んでいる姿を見るのが好きなんです。周りの選手だけでなく、スタッフを含めてみんなが努力して1年を過ごしたことが報われる、その瞬間を味わいたいんです。幸せなことに、もう10年かな、それを続けて経験できています」

