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「すべてが完璧だった」クロワデュノールの日本ダービー“現地ウラ側”…38歳の苦労人・北村友一はなぜ“泣かなかった”のか? 会見後に見た、ある光景
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島田明宏Akihiro Shimada
photograph byKeiji Ishikawa
posted2025/06/02 17:02
堂々たる横綱相撲で後続を振り切り、日本ダービーを制したクロワデュノール。鞍上・北村友一とともに皐月賞の雪辱を果たした
と、普通ならレース展開を細かく振り返るところだが、このダービーに限っては、「クロワデュノールが横綱相撲を見せた」というひと言で済ませるのが最良ではないか。
そのくらい、クロワデュノールの状態も、走りも、北村の騎乗も、すべてが完璧だった。
「みんな見てくれ」クロワデュノールを何度も指し示した
3、4コーナーを抜群の手応えで回って直線に入り、ラスト300m付近で抜け出し、後続の追い込みを封じてゴールを駆け抜けた。
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2分23秒7の勝ちタイムで、2022年に生まれた7950頭の頂点に立った。強いクロワデュノールが、さらに強くなって帰ってきた。キタサンブラック産駒としてダービー初制覇。あのイクイノックスさえ手にすることのできなかった栄冠に輝いた。
4分の3馬身差の2着にマスカレードボールが詰め寄ってきたが、どこまで行ってもかわされそうな感じのしない「大きな4分の3馬身差」だった。
3度目のダービー騎乗で栄冠をつかみ取った北村は、右の人差し指でクロワデュノールを何度も指し示した。
――みんな見てくれ、この馬はこんなに強いんだよ。
という意味だろう。
「ぼくがダービージョッキーになったことより、クロワデュノールをダービー馬にできたことが何より嬉しいですし、そこに最高のエスコートをすることができてよかったです。自分が思っていたとおり、この馬が一番強かった」
そう話した彼は、どんなレースプランを持って臨んでいたのか。
「ポジションなどは気にせず、いいスタートを切って、自分のリズムで行こうと思っていました。1コーナーの入り方も、向正面や3、4コーナーの走りもイメージ通りでした。ずっと人馬一体になることができたような気がして、余計なことをしなくても、馬がいいリズムで走ってくれました。2400mを一緒に走ったな、という気がします」
無敗の三冠獲得をも期待されながら2着に惜敗した皐月賞の雪辱を果たした。
厩舎開業10年目、4度目の出走でダービートレーナーとなった斉藤調教師はこう話す。
「追い切りのことであったり、レースプランであったり、(この中間ほど北村と)話したことはなかったので、一杯話したなかでこうして勝てたのはよかったです」



