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ネイマール号泣から5年…メッシ&エムバペ放出で「フェーズ3だ」PSGとインテルのCL決勝「イングランドもスペインもドイツ勢もいない」けど必見の理由
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井川洋一Yoichi Igawa
photograph byPiermarco Tacca - UEFA/Getty Images
posted2025/05/31 11:04

ミュンヘンでのCL決勝に向けて、イニエスタがビッグイヤーをセットするなど、キックオフ前から盛り上がりを見せている
2022年初夏に迎えたポルトガル出身のフットボール・アドバイザー、ルイス・カンポスが“スポーツ面のみ”を考慮して、現在25歳のヴィティーニャ、22歳のヌーノ・メンデス、20歳のジョアン・ネヴェス、23歳のゴンサロ・ラモスの同胞4人や、19歳のデジレ・ドゥエ、23歳のウィリアン・パチョ、そして今年1月には24歳のフビチャ・クバラツヘリアといった若い即戦力を揃えていった。
並行して、23年夏にはリオネル・メッシとネイマールを、そして昨夏にはエムバペも放出している。フランス代表キャプテンがレアル・マドリーへの移籍を表明した時、PSGでのデビューシーズンを国内2冠で終えたルイス・エンリケ監督は、次のように話している。
「PSGはこれから、もっともっと強くなる。今後は強いメンタルを持ち、クラブを象徴するような選手を獲得していく」
スーパースターのひらめきに頼るのではなく
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その言葉通り、今季のチームは日を追うごとにレベルを上げているように見える。
守護神ジャンルイジ・ドンナルンマと主将マルキーニョスを中心に堅牢な防御壁を築き、ヴィチーニャを筆頭とするスキルフルかつタフな中盤の3人がリズムを生み出し、ウスマヌ・デンベレを軸とする破壊力満点の前線が相手ゴールを襲う。アーセナルとのCL準決勝第2戦のように、相手にボールを握られる時間帯には、辛抱してやり過ごすこともできる。どんな状況にも対処できるようになり、昨季は跳ね返されたベスト4の壁を乗り越えた。
スーパースターのひらめきに頼るのではなく、ハードワークできる選手たちが攻守に組織的に動く。ルイス・エンリケという知識と気概を高度に兼ね備えた指揮官が作り上げた手強いPSGは、いよいよ悲願を達成するのだろうか──。
モウリーニョ政権以来…インテルの強みとは
ただし、インテルは厄介な相手だ。
2021年夏からシモーネ・インザーギ監督が綿密に仕立て上げてきた集団は、ハビエル・サネッティ副会長いわく、「家族のように結束している」。このインテルとアルゼンチン代表のレジェンドは、2010年にジョゼ・モウリーニョ監督と共にCL優勝杯を掲げている。イタリア勢として最後に欧州の頂点に立ってから15年。クラブ4度目の至高のタイトルを狙う今のチームは、当時のチームと通じるところがあるという。
最終ラインの枚数こそ違えど、手堅く守って、相手の陣形が整わないうちにゴールを強襲する。誰もが集中を研ぎ澄ませ、展開を的確に読み、相手の縦パスが入るところに、迷いなく、激しくチャージにいく。
あの頃はディエゴ・ミリートという頼れるストライカーがいたが、今のインテルには主将にして世界と南米の王者アルゼンチン代表のラウタロ・マルティネスがいる。ワイルドかつ精緻なゴールマシンがCLも手中に収めれば、完璧なメジャータイトルのコレクションが出来上がる。今大会、出場ここ7試合で8得点と1アシストをマークする27歳のエースなら、自らの力でこの絶好の機会を強引に掴みそうな気もする。
後ろと脇を固めるのは、主に経験豊富な猛者たちだ。