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「松坂さんの記録を超えなければよかった」甲子園最速の158キロで“21世紀の怪物”と言われた寺原隼人、24年越しの告白…「スーパールーキー」その後の人生
posted2025/06/02 11:02

現在はホークスの3軍投手コーチを務める寺原隼人さん(41歳)
text by

田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph by
Kotaro Tajiri
甲子園で投げた一球が、ひとりの球児の運命を変えた。球史に残る「158キロ」の真実を、41歳になった寺原隼人本人が“24年越し”に明かす――。《NumberWeb「スーパールーキー特集」全3回の最終回/第1回、第2回も公開中です》
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プロ野球デビュー戦となった4月16日の日本ハム戦(東京ドーム)。寺原隼人は足が震えたのを鮮明に覚えているという。
「震えたのはセットポジションの時。ランナーなしで振り被るときはそんなことなかったのに、セットポジションで体の動きを止めてしまうと足がガタガタと震えてしまって」
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5回0/3で8安打4失点。最速は148キロ。味方打線が9回表に逆転して黒星は免れたが、ほろ苦デビューだった。
プロ初勝利の日にまさかのエピソードが…
2度目の先発は中11日で4月28日のオリックス戦(福岡ドーム)。今度は4回までパーフェクトに抑える快投で、6回3安打無失点、7奪三振、最速は前回と同じ148キロの好投でプロ初勝利を挙げた。
じつは、ちょっとした笑い話がある。
9回表。ダグアウトで初勝利を祈りながら戦いを見守る寺原に、先輩捕手の坊西浩嗣が声をかけてきた。
「テラ、高卒1年目で初勝利を挙げたピッチャーが先輩たちをベンチで出迎えるのはおかしいだろ? 初勝利のウィニングボールは自分でマウンドにもらいに行くのがプロ野球の決まり事なんだぞ」
ゲームセットの瞬間、寺原はグラウンドに飛びだしてマウンドに向かっていった。