「ボスは誰だ？」藤原喜明の問いに、船木誠勝が沈黙した会議…藤原組“わずか2年の解散”全真相と、パンクラスを生んだ高橋義生との一戦 

「知名度もお金もない。全試合を格闘技でやるしかない」

　こうして藤原組は、組長の藤原と若手の石川雄規を除く全選手が離脱。その後、船木たちは新団体パンクラスを設立。“完全実力主義”を打ち出し、全試合を純然たる格闘技の試合として行いマット界に衝撃を与えたが、そうなるきっかけは藤原組時代の試合にあった。

「藤原組時代、自分がどういう試合をしていったらいいのか悩んでいた時、まだ若手だった高橋義生も藤原組がまだ格闘技ではなくプロレスの試合だったことに悩んでたんですよ。その時、高橋に『今度の俺との試合、全力で格闘技の試合としてやってみないか？』って自分から提案したんです。高橋は『えっ、いいんですか？』って感じだったんですけど、UWFで鈴木（みのる）とやった時と同様に自分は負けないだろうと思ってやってみたんです。それで自分が勝ったんですけど、負けた高橋も『ようやくやりたいことができた』ってよろこんでたし、『やっぱり俺たちの進む方向はこっちだな』って感じたんです」

パンクラス時代の船木誠勝（1996年撮影）　©AFLO

　この船木誠勝vs高橋義生がパンクラスの試合スタイルの元となった。

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「それで藤原組を離れて自分たちで団体を立ち上げる時、まだ俺も鈴木も前田さんや髙田さんほどの知名度は全然ないし、テレビ放映も付いてない、お金もない。じゃあ、そういう中で何を売りにするかっていったら、試合を完全に格闘技に変えるしかないと思ったんですよ。そうすればUインターやリングスとの差別化にもなるし、もともと自分たちがやりたいことでもあったので。最終手段として全部の試合を格闘技でやるしかないって決めましたね。

　それで旗揚げしてすぐ、（外国人エースだった）ウェイン・シャムロックが第1回のUFCに出て、ホイス・グレイシーに負けたから、そっち（顔面パンチありのバーリ・トゥード）とも絡まざるを得なくなって。偶然なんですけど必然というか、最終的に自分がヒクソン・グレイシーとやるのも、なんかそういう運命だったのかなって思います」

　船木たちが立ち上げたパンクラスは今年旗揚げ32年を迎える。UFCよりも歴史が長い、世界でも屈指の老舗MMAプロモーションは、強さを求めた若きプロレスラーの情熱とともに始まったものなのである。

《インタビュー前編も公開中です》