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ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER
「井上尚弥は効いていたと思う。でも…」長谷川穂積がカルデナス戦3つの「なぜ」を読み解く! いつもと違っていた井上の“ディフェンス”
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渋谷淳Jun Shibuya
photograph byGetty Images
posted2025/05/11 11:09
井上は一貫して攻撃的な戦い方を選択し、いつものように相手のパンチをかわさずにブロックでディフェンスして打ち合った
「ガードをがっちり固めて、構えたところからノーモーションでジャブを打てる選手でした。いいタイミングのジャブを持っていて、何より想像以上にパンチがあって、キレもありました。打ち終わりを狙って思い切り振ってきましたけど、空振りを見ても、これをもらったら危ないなというパンチでした」
井上のパフォーマンスにも目を見張るものがあったという。
「ダウン以降、井上選手はジャブの数と的確性で流れを引き寄せました。そして相手が打ち終わりを狙っていると分かった上で攻めていくところがすごい。私も最初に試合を見たときは、かなりハラハラしながら見たんです。でも何回も繰り返して細かく見ていくと、井上選手のすごさがよく分かりました」
カルデナスが「井上のパンチに慣れた」
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6回に井上に攻め立てられたカルデナスは7回に反撃した。前に出て井上にロープを背負わせた。この場面も長谷川さんの印象に残った。
「井上選手のパンチにも慣れたんでしょうね。L字ガードっぽくして、左肩をうまく使い、頭を右や左にもっていって井上選手を下がらせました。両ガードを上げていると肩が使いにくいけど、L字だと肩が動かしやすい。(フロイド・)メイウェザーが得意でした。そうやって井上選手にロープを背負わせて、そこから攻撃を仕掛けた。左ボディを浴びた井上選手がちょっと効いたように見えました。嫌がっただけかもしれないですけど」
あそこから倒すとは
やや後退しかけた井上だが、ここから再び攻勢に転じ、ついにカルデナスをキャンバスに突き落とす。T-モバイル・アリーナが爆発したように沸いたシーンだ。長谷川さんもこれには「あそこから倒しましたからね。すごすぎますよ」と脱帽するしかなかった。
井上が8回にラッシュしたところで主審が試合を止めた。後編では楽勝とみられた試合が熱戦になった理由をもう少し掘り下げ、井上の今後の課題にも触れていきたい。
〈つづく〉

