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ボクシングPRESSBACK NUMBER
「1Rからいいジャブだなと…」敗者カルデナスはなぜ井上尚弥に“大善戦”できたのか? 怪物と最も拳を交えた男が感じた「井上の“ある変化”」
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森合正範Masanori Moriai
photograph byGetty Images
posted2025/05/09 17:30
ジャブを止めないことが、カルデナス善戦の要因だったと黒田氏は語る
カルデナスは「ポジショニングが相当うまい」
7ラウンド1分40秒、ロープに詰められたカルデナスは近い距離で井上に正対しながら左肩で押すように前へ出た。一瞬、井上の攻撃が止まり、カルデナスが盛り返した。
――距離が詰まったときのポジショニングですね。
「たびたびありましたが、7ラウンド目、カルデナス選手がロープに詰まったときが一番わかりやすい。いつもだったら、井上選手はもうワンステップ、一歩離れたり、サイドにずれるんですけど、カルデナス選手はそれをさせないように僕は感じました。井上選手からすれば、もう少し右にずれたほうが打ちやすい。でもカルデナス選手はそうさせない。カルデナス選手のポジショニングは地味に見えて相当うまいです。とにかく研究している」
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――井上選手が頭をつけている場面ですね。
「井上選手は相手に押されないために頭をつけていると思います。あの場面、バックステップでもいいのですが、そうすると相手の右が伸びてきていたので、あえてくっついたのかなと感じました」
今回の井上は「魅せるボクシングを貫いていた」
7ラウンド残り30秒を切り、井上はワンツーからの左フックでカルデナスにダメージを与え、コーナー付近で右のショート4連発でダウンを奪った。
――あの右4発はいかがですか。
「ネリ戦と同じで、なんか言い方が難しいですが、一般的には腰が入っていないというか、ボクサーっぽくないパンチじゃないですか。でも、余分な力が入っていないから、拳に力が乗るんでしょうね。あれで上の階級で闘っていたような選手にダメージを与える、って私にはもう理解不能なパンチです」
――試合を通して、井上選手の状態、出来はどう見ましたか。
「一部の人が、井上選手が崩れてきた、とか言っているのを見ましたけど、僕にはそう見えなかった。動きが悪かったのではなく、相手が良かった。それでも結局、最後は井上選手がねじ伏せるのが凄いですよね。個人的に思うのは、本来の井上選手のボクシングとはちょっと違う、ラスベガスのお客さん向けの試合だったと感じました」
――試合前、井上選手は「KOで終わらせないといけない試合」と語っていましたね。


