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「1Rからいいジャブだなと…」敗者カルデナスはなぜ井上尚弥に“大善戦”できたのか? 怪物と最も拳を交えた男が感じた「井上の“ある変化”」

posted2025/05/09 17:30

 
「1Rからいいジャブだなと…」敗者カルデナスはなぜ井上尚弥に“大善戦”できたのか? 怪物と最も拳を交えた男が感じた「井上の“ある変化”」<Number Web> photograph by Getty Images

ジャブを止めないことが、カルデナス善戦の要因だったと黒田氏は語る

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森合正範

森合正範Masanori Moriai

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「怪物と最も拳を交えた男」の目にラスベガスの一戦はどう映ったのか。54日(日本時間5日)、井上尚弥がラモン・カルデナスから8TKO勝利を収めた。井上のプロテストの相手役など長らくスパーリングで拳を交えてきたのが、元日本2階級制覇王者の黒田雅之だ。インタビュー後編では、カルデナスが善戦した具体的な要因や、今回見えた井上の“ある変化”などについて解説してもらった。《NumberWebインタビュー全2回/前編から続く

◆◆◆

カルデナスはスーパーフェザー級やライト級で闘ったことがあり、キャリア中盤までは上の階級を主戦場としてきた。26勝のうち14KO。下馬評はさほど高くなかった。

――具体的にカルデナス選手のどこが良かったですか。

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「これまでの対戦相手も、ガードを固めてカウンターを狙うという、自分なりに勝ちに行く方法論を持って闘っていたと思うんです。カルデナス選手は、ガードを固めて、前に出ながらカウンターを狙っていましたよね。前に出ながらというのが大きいです」

カルデナスが善戦した最大の理由

――それって難しいですよね。井上選手のパンチをもらってしまうと、どうしても萎縮して、ガード一辺倒になってしまう。

「難しいです。先ほど、井上選手の左ジャブについて話しましたが、カルデナス選手も左ジャブをきちんと打っていました。ジャブの打ち合いで負けたからといって、カルデナス選手は左ジャブをやめなかった。1ラウンドからいいジャブだなと思いました」

――差し合いで負けても、ジャブを打つことが大切だ、と。

「どんな選手でも、最速のパンチはジャブ。しかも、距離を測ったり、相手をけん制したり、ダメージを与えたり、左ジャブにはいろんな役割があります。ジャブで負けて、それをやめてしまうと、その役割を全部放棄することになる。カルデナス選手は打ち負けてもいいジャブを打ち続けていました。それがあるからこそ、相手もやりづらくなる。今回の試合を見て、やっぱりジャブが大切だよな、と痛感しましたね」

――中盤以降、井上選手のペースではありますが、カルデナス選手もすごくタフでした。

「カルデナス選手の立ち位置がすごく良かったんですよ。くっついたときに井上選手が打ちづらそうに感じました。ボクサーって、近づいて組んだとき、打ちやすい位置、打ちづらい位置があるんです。カルデナス選手は正対するというか、絶妙に井上選手の打ちづらいポジションに立っていると感じました。しかも、くっついたとき、体の力の掛け方が上から押すような感じで、そうすると井上選手がサイドに動くのも難しい。試合後のインタビューでも言っていましたが、本当によく研究してきたんだなと思いました」

【次ページ】 カルデナスは「ポジショニングが相当うまい」

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