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藤井聡太と永瀬拓矢の名人戦「関係者はソワソワ」GWの羽田空港に“2人だけの異空間”…取材記者が見た舞台裏「飛行機を止めてくれと言われるかと(笑)」 

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いしかわごう

いしかわごうGo Ishikawa

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posted2025/05/07 11:28

藤井聡太と永瀬拓矢の名人戦「関係者はソワソワ」GWの羽田空港に“2人だけの異空間”…取材記者が見た舞台裏「飛行機を止めてくれと言われるかと(笑)」<Number Web> photograph by Number Web

ゴールデンウィークの羽田空港で行われた名人戦第2局。藤井聡太名人と永瀬拓矢九段が白熱の攻防を繰り広げた

「千日手の可能性も…」関係者はソワソワ

 大盤解説会は14時から始まった。

 会場となるギャラクシーホールは、30m程の大きな窓から滑走路が見える作りになっている。空港ならではのロケーションだ。200人ほどの席は埋まり、老若男女の将棋ファンで会場は満員である。

 2日に渡って行われる名人戦は、持ち時間がそれぞれ9時間。2人合わせて18時間という長丁場なので、解説会も休憩を挟みながら行われる。最初に登場したのは、名人位を3期保持した佐藤天彦九段と武富礼衣女流初段のコンビである。中田功八段の門下の兄妹弟子だ。その後、立会人の中村修九段や、副立会人の広瀬章人九段と阿久津主税八段も交代で登場しながら、解説会を盛り上げていた。

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「トラブルはたくさんありますよ」

 立会人でもある中村が、詰めかけた将棋ファンの前でそう切り出す。

 中村は王将のタイトル経験があり、立会人の経験が豊富だ。多くのタイトル戦は滞りなく進むそうだが、いつも順調とは限らない。大なり小なり問題は起きるようである。

 この名人戦第2局では、1日目の昼食休憩直後の46手目 (△9二香)から千日手の可能性が生まれる局面となって、関係者をそわそわさせていた。

 同一局面が4度出現して千日手が成立した場合、先手と後手を入れ替えて指し直しとなる。2日制で行われる名人戦の場合、1日目の午後4時以降に千日手となると、封じ手を行わずに翌日の2日目に指し直しとなる。立会人として、そうした対局規定を確認したとのことだった。

 盤上のことであれば対局規定に照らし合わせて判断すれば良いが、盤外でのトラブルが起きることも稀にある。

 例えばある年の名人戦では、対局中の騒音問題が起きている。

 対局者から相手の扇子を閉じる音が大きくて気になるとの指摘が立会人を通して入り、対局が一時中断されたのだ。このときの立会人が中村だったのである。主催者や副立会である木村一基八段(当時)と協議し、相手の考慮中に扇子の音に配慮するよう要望。両者に納得してもらってから再開した。

【次ページ】 立会人のウラ話「飛行機を止めてくれと言われるかと」

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