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「140kmも出なくなって…」95年ヤクルト“最強ローテ”の山部太がサイドスロー転向で見せた意地…1年だけの輝きの後に「細く長く、よくやったな」
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二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/05/10 11:04
現在はスワローズの編成部でプロスカウトを務める山部。チームカラーに合う選手を再生させる目利きには定評がある
球団の人事によって編成、二軍投手コーチ、広報などを務め、現在は編成でプロスカウトを務めている。プロスカウトとはその名のとおり、他球団の選手を調査、獲得する役目を担っている。
今野、小澤らを再生させた「目利き」
戦力外通告を受けたなかでは東北楽天から今野龍太(現在は楽天に復帰)、ソフトバンクから小澤怜史らを獲得。今野は2021年シーズン、64試合に登板してリーグ優勝に大きく貢献し、小澤は昨年、チームの苦しい台所事情において先発、リリーフとフル回転して6勝6敗2ホールド11セーブという好成績を収めている。山部の目利きが信頼されていることは言うまでもない。
「編成のプロスカウトも二軍投手コーチに続いて2回目なので、球団から任せてもらっている部分もあります。あまり実績のない選手であっても、ウチに来たら伸びそうだなと思っている選手を連れてきます。ヤクルトは伝統的に明るい球団ですし、素直な選手ばかり。だから選手に声を掛けるときもそういうことは伝えます。
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今野も小澤もそうですけど、ああやって活躍してくれたら嬉しい限り。本来ならドラフトで獲得した選手をしっかり育てて、強いチームにしていくのが基本。ただ自分の仕事で言えば、他球団で力を出し切れていない選手を獲ってきて頑張ってもらうこと。そのやり甲斐は感じています」
”一瞬の輝き”だけでなかった意地
54歳になったサウスポーは、今も体型が変わらない。ケガがちだった体を強くするべく、コンディショニングを旨とする習慣はずっと続いている。
本人は「細く長く」と言うが、1995年の16勝という一瞬の輝きに終わらせることなく2003年の防御率1.05につなげたのは彼の意地だった。
山部の名は太。細く長く、そして太く。野球人生はまだまだ続く。どこかでまた「太く」があらんことを——。
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