体重差95キロ「気を抜いたら殺される」五輪メダリストが語った“柔道のシビアな現実”…それでも阿部一二三が“無差別級”に挑んだ「本当の理由」 

　初めてvs.重量級の対策を練っていくうちに、阿部は勝負のキーポイントが「組み際」にあると悟った。

「軽量級は力で負けているので、重量級の選手とやるにはまともに組み合うと厳しい。だったら持ってすぐ技をかけることが重要だと思いました」

「挑戦者の気持ちを忘れない」無差別級に挑んだ理由

　重量級を相手にした連戦のダメージは大きかった。試合後、阿部は指にかかる「すさまじい負荷」についても語った。

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「重量級と練習する中で常に指が痛かった。どれだけ強く握り込んでも、自分の指を切られると指が飛んでいってしまうんじゃないかと思うくらい痛かった。そこに重量級と軽量級の差を感じましたね」

　五輪を連覇している阿部は、66kg級では世界の誰と闘っても挑戦を受けて立つ立場にある。しかしながら無差別級では自分が挑戦する立場になる。いつもとは正反対のポジションで試合をできたことは想像以上に刺激になったと言う。

「66kg級だと、どこかに負けたらいけないというプレッシャーがあったりする。でも今回全日本に挑戦することで、挑戦者の気持ちを忘れたらいけないと改めて思いました」

　令和になっても生きていた「柔よく剛を制す」の精神。阿部にとっては敗れたことよりも、得たものの方が大きい無差別級への挑戦だったか。見る者にとっても、いつになくエキサイティングな大会になったことは間違いない。体重無差別で、真の最強を決めるというロマン――これだから全日本はやめられない。