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「女性の心を完全に理解できると思わないが」ニルス監督流“なでしことの信頼構築”が深い「モモとは英語で。一方でサキ、ミナは…」
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井川洋一Yoichi Igawa
photograph byBrad Smith/ISI Photos,Getty Images
posted2025/05/03 11:04
シービリーブスカップで驚愕のロングシュートを叩き込んだ谷川萌々子。彼女を含めたなでしこに、ニールセン監督はどう働きかけている?
「モモは英語を少し話すので、通訳がいなくても会話ができる選手のひとりです。キャプテンのサキ(熊谷)とも直接コミュニケーションできます。ただ、豊富な経験を持つサキと話すような内容を、ほかの選手ともするかと言われれば、それは違う。私が心掛けているのは、一人ひとりとしっかり向き合い、何よりも彼女たちに安心してもらうこと。リラックスして、自分らしくなってもらうことです。そうでなければ、私の要求にも応えてもらえないでしょう。
選手にかかるプレッシャーを取り除くことはできないけれど、重圧があっても問題なくプレーできるように促したい。そして互いを理解すればするほど、より細やかな指示が通じるようになる。だから選手によって、話し方は少しずつ違います」
女性の心を完全に理解できるとも思わないからこそ
──たくさんの異性の若者とコンスタントに接することを、難しく感じることはありますか?
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「それはややトリッキーな質問ですね(笑)。というのも、私には長い経験があるので、女子選手との仕事を難しいとは思いません。でも私は男性なので、女性の心を完全に理解できるとも思わない。少なくとも、簡単ではない。
時々、彼女たちのリアクションに驚かされることがあります。自分では特に変なことを言ったつもりはないのに、意外な反応が返ってくる時がある。女子の指導を始めてから長い年月が経ちましたが、今でもそうです。でもだからこそ、常に学びがあるし、謙虚でいられるのです」
ミナはMVPを自分だけの手柄にしない
そんな地に足のついたコミュニケーターは代表監督就任に際し、「目標は日本を世界のトップに戻すこと」と言った。実際に指導を始めて、彼女たちのポテンシャルをどう感じているのだろうか。
「(世界一に返り咲くことは)間違いなく、可能です。次の2027年W杯で優勝できる保証はありませんが、チャンスはある。そのためには、チームがハードワークを重ね、自分たちの強みを伸ばしていくのはもちろん、周囲のバックアップも重要になります。協会、パートナー、メディア、ファンなど、全員で積極的にサポートしてもらいたい。なでしこジャパンの話題を取り上げたり、スタジアムで声援を送ったり、テレビの前で応援したり。それは本当に選手たちの背中を押してくれます。
選手の能力については、何度も言っていますが、まったく心配していません。

