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陸上競技《U20日本王者》が「東大現役合格」の衝撃…“究極の文武両道”吉澤登吾とは何者か?「特別なことはなにもしていなくて。ただ…」 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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photograph by(L)Tokyo Sports、(R)Yuki Suenaga

posted2025/04/30 11:06

陸上競技《U20日本王者》が「東大現役合格」の衝撃…“究極の文武両道”吉澤登吾とは何者か?「特別なことはなにもしていなくて。ただ…」<Number Web> photograph by (L)Tokyo Sports、(R)Yuki Suenaga

昨年のU20日本選手権800mで優勝した吉澤登吾。日本代表にも選ばれながら東京大学に現役合格し、4月から大学生活をはじめた18歳の素顔とは?

 ただ、吉澤はこの機会にひとつだけ、自分を「実験台」として走る機会を設けることにした。

練習しないと「人はどれくらい遅くなる?」

「練習をしなくなったら、人はどれくらい遅くなるんだろう? ということに興味がありました。過去に『オリンピックの代表クラスの選手が練習をやめてから、2~3カ月後に最大酸素摂取量がどれくらい落ちるのか』という研究結果を見たことがあって。じゃあ、半年間練習をまったくしないとどうなるんだろうと思ったんです。そこで、受験のために練習を中断してから50日後、100日後、150日後に800mのタイムを計測することにしました。自分、そういうのが好きなんで」

 吉澤の自己ベストは、高校3年の6月にU20日本選手権でマークした1分47秒80。さて、9月に競技を中断し、トレーニングをしなくなった体で、タイムはどのように変化していったのか。

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・50日後、2分03秒。
・100日後、2分08秒。
・150日後、2分07秒。

「この結果から導き出されるのは、50日目までにガクッと落ちてから、それが100日目くらいまで続く。ただし、それを過ぎてからは停滞局面に入るということです」

 このチャレンジは大学に入ってからの陸上競技のためではなく、自らの肉体で実験するという「知的欲求」を満たすものだったのだろう。面白いのは「自分がどれだけ遅くなるのか?」という命題に対して、真剣にアプローチしていることだ。

 学究肌のランナー……いや、学究の人といった方が正確だろう。

 さて、そんな学究の人にとっては、受験勉強は苦でもなんでもなかった。「陸上の日本王者が東大合格」という字面だけを追えば驚くが、その道のりは実に淡々としたものだった。

<次回へつづく>

#2に続く
「受験では数学が得点源に…」陸上競技のU20日本王者がなぜ「東大に現役合格」できた? “究極の文武両道”吉澤登吾が描く“どっちも選ぶ”未来図

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