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陸上競技《U20日本王者》が「東大現役合格」の衝撃…“究極の文武両道”吉澤登吾とは何者か?「特別なことはなにもしていなくて。ただ…」 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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photograph by(L)Tokyo Sports、(R)Yuki Suenaga

posted2025/04/30 11:06

陸上競技《U20日本王者》が「東大現役合格」の衝撃…“究極の文武両道”吉澤登吾とは何者か?「特別なことはなにもしていなくて。ただ…」<Number Web> photograph by (L)Tokyo Sports、(R)Yuki Suenaga

昨年のU20日本選手権800mで優勝した吉澤登吾。日本代表にも選ばれながら東京大学に現役合格し、4月から大学生活をはじめた18歳の素顔とは?

 吉澤は8月27日に行われた予選を通過し、29日の準決勝に進出したが、ここで敗退。インターハイ王者の落合は、3位で表彰台に上った。同世代の海外選手たちと走っての感想は、どんなものだったのか。

「海外の選手たちは、同じ人間ではあるが『選手として極まっている』と思いました。体を見ただけで違いますからね。それこそアフリカの選手たちはアジア人とは骨格が違って、まるで走るためにデザインされているようで。

 ただ、自分にとっては目指せない範囲の人類ではない……とも思いました。たとえばエチオピアの選手のウォーミングアップは意味があるようには見えなかったし、ケニアの選手はレースでは突っ込んでいるだけに見えました。クリエイティビティやインテリジェンスは感じられないんですが、速い。逆にいえば、付け入る隙があるっていうことですよね」

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 また、3位に入った落合からも刺激を受けた。身長165cmの落合は、海外勢と比べると体格的にはひと回り小柄である。

「それでも落合は戦えていました。つまり、体格は言い訳にはならないということです。それを彼は実証していたわけで、僕にもチャンスがあると思えました」

 ペルーの地で、吉澤の観察眼が発揮されていたことが想像される。いつか、世界で戦うための情報収集というべきだろうか。

東大受験へ…「夏の時点で勝算があった」

 そして9月3日に帰国。これ以降、吉澤は一切、体に負荷をかける練習をやめた。

 受験期に突入である。

「夏の時点で受験には勝算があったので、なんなら『陸上を休まなくてもいいんじゃないか?』とも思っていました。ペルー遠征に行くのも、親は心配だったようです。その気持ち、分からなくはないんですが(笑)。

 そこからは東大への合格を確実にするための準備に入りました。トレーニングとしての練習は全部ストップ。ただ、コンディショニングのために、15分ジョグだけは毎日続けていました。陸上のためとかじゃなく、本当に血流を良くして、リフレッシュするためです」

【次ページ】 練習しないと「人はどれくらい遅くなる?」

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