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プロ野球PRESSBACK NUMBER
巨人・阿部慎之助監督が命令「お前らも短パンで来い」報道陣ビックリ…“澤村の頭をポカリ”事件から13年「早起きごめんな」記者を気遣う阿部監督の今
text by

谷川良介Ryosuke Tanikawa
photograph bySankei Shimbun
posted2025/04/25 11:05

昨夏、短パン姿で練習を見つめる巨人・阿部慎之助監督
日本ハムとの日本シリーズ第2戦。先発を託された24歳の澤村拓一は初回から浮き足立っていた。その澤村が牽制のサインを見誤ると、当時33歳の阿部はマウンドに駆け寄ってプロ2年目の右腕の頭をバシッと叩いた。中央大学の先輩・後輩という関係性あってのことだろうが、東京ドームに駆けつけた大観衆が見守る中で、いわば“公開説教”をしたのだ。
この叱りで目を覚ました澤村は、日本シリーズ初登板で8回無失点の好投を見せる――。
良い結果を生んだことで今も名場面として語り継がれる“澤村ポカリ事件”。一方で、あれから13年……時代が変わり、価値観も変わった。阿部監督自身も昨年ラジオ番組で、「今、時代が変わって。厳しいこともね、なかなか言えなくなってきた」「今ではああいうことはできない」と認めている。
番記者「記事になるように発言してくれる」
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改めて関係者の話に耳を傾けると、現在の阿部慎之助像が少しずつ変化していく。
遠征出発前の囲み取材でのこと。阿部監督は集まった記者にこう言った。
「オレが朝早いせいで早起きさせてごめんな、と。そんなことを言ってくれる人なかなかいないですよ。一緒に働いているんだなという気持ちになりました」
会場入りのお迎えも、帰りの見送りもいらないから――巨人軍を統率する監督という立場でありながら、腹を割って付き合っていこうという兄貴のような距離感。1年間チームに張り付く記者にとって心のよりどころになっている。
コロナ禍を契機にメディアの取材環境は変化した。決められた時間に、球団広報を伴った選手の話を聞く。選手の懐に入って関係を作り、独自のネタを抜くなんて取材は昔のように容易にできなくなった。特に報道陣が多い東京ドームは個別取材のチャンスが少なく、記者泣かせなのだという。そこで大事になるのは信頼関係だ。記者の前に立つ阿部監督はいつも歯切れがいい。