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「C2叡王」心ないコメントに傷ついた将棋棋士の本心「タイトルに申し訳ない…」「たった1つの敗戦で人間は変わる」高見泰地が苦悩した日々 

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大川慎太郎

大川慎太郎Shintaro Okawa

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photograph byKyodo News

posted2025/04/20 06:02

「C2叡王」心ないコメントに傷ついた将棋棋士の本心「タイトルに申し訳ない…」「たった1つの敗戦で人間は変わる」高見泰地が苦悩した日々<Number Web> photograph by Kyodo News

2018年、初タイトルとなる叡王を獲得した際の高見泰地。ただ当時、順位戦はC級2組所属で、心無いコメントが並んだこともあった

 タイトルホルダーが順位戦の最下位クラスに在籍している。

 C2叡王。

 生放送中に流れてきた心ないコメントを見て傷ついたこともあった。昇級するしかないが、叡王なのだから上がって当然、いや上がらないと許されないという雰囲気があり、それは高見をじわじわと締めつけた。

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 リーグ初戦で石井に惜敗し、結局この期は8勝2敗でC級2組から昇級することができなかった。

「手が伸びなかった。背負っているとてつもなく大きいものに対応することができませんでした」と高見は悔やむ。

 この時期、高見の体調に異変が起こっていた。重度の逆流性食道炎に悩まされていたのだ。複数の病院に行ったが、どこでも神経性のものと診断された。対局日は特に症状がひどくなり、ずっと胃を押さえているような状況だった。

「胃痛が解消されたのはB級2組に上がった時です。『もう許されるでしょ』と。叡王経験者がCクラスではいけない、タイトルに申し訳ない、というプレッシャーからようやく解放されたので。今はもう大丈夫。その時に比べると、日々の活動量が2.5倍くらいに増えました。それで研究会も詰め込めるようになったんです」

相手の星取りを対局中に意識しすぎました

 10回戦の石井戦は12月12日に行われた。高見が5勝4敗、石井は抜け番があって4勝4敗だった。

「相手の星取りを対局中に意識しすぎました。石井さんもビビってるんじゃないかと思っていたんですよ」と高見は明かす。

 どういうことなのだろう。〈つづく〉

#4に続く
「将棋を嫌いになりつつあった」「体も心も削り取られる1年」順位戦降級危機と敗戦直後…高見泰地が今も感謝する“後輩棋士の寄り添い”とは
この連載の一覧を見る(#1〜4)

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