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「精神的にバグりました。自分が沼に」「嬉しさと畏敬の念、戸惑いが」“憧れの羽生善治戦”を筆頭に…タイトル経験者が語る“激痛の順位戦”
text by

大川慎太郎Shintaro Okawa
photograph byAsami Enomoto/Nanae Suzuki
posted2025/04/20 06:01

高見泰地七段(左)にとって、第83期順位戦B級1組でのターニングポイントとなったのは羽生善治九段との一局だった
「B級1組は総当たりなので、昇級争いや残留争いをする相手と必ず直接対決があります。それが大きく響いてくるんですよ。大逆転負けを喰らうと、自分の星が1個下がるだけではなく相手の星が1個上がるので、それが激痛なんです。B級2組までだったら、自分が負けても競争相手も負ける可能性だってあるじゃないですか。とにかく自力で這い上がらないと相手が這い上がってきて、自分が沼に落とされてしまう。初参加でそのことを痛感させられましたね」
高見にとって羽生は憧れの棋士である。
「嬉しさ、畏敬の念、それから自分が当たれるのかという戸惑いみたいなものがありました」と素直な感情を漏らした。
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先手の高見は、「自分がいちばん信じている相掛かり」に勝負を託した。早々に力勝負になり、高見は羽生陣へ力強く駒を向けた。
「正直、途中の形勢とかはよくわかりませんでした。とにかく激戦だな、と」
激戦のまま深夜に…高見に好機が訪れた
中盤からAIの評価値は高見側に振れ始めたが、もちろん対局中は知る由もない。夜戦に入り難しくなった瞬間もあったが、また高見に好機が訪れていた。
「相変わらず激戦だなと思いながら深夜になりました。自分が先に一分将棋になって、羽生先生が6~7分残っていたんです。その時、こちらが受けか攻めかという選択に迫られました」
それが、本局の命運を左右した。〈つづく〉

