「全部アドリブですね」“ビッグバン”中谷潤人の衝撃のKO劇は、いかにして生まれたか？ 30戦30勝・絶対王者の本音「想定外を想定内にしていく」 

「最初にボディーが入って、効いたなとは思いました。後は空いているところを打っただけです。決め打ちは一つもなく、全部アドリブですね。（最後のワンツーは相手が）ロープを背負ったので、そのまま体ごと右をぶつけるみたいに打ちました」

　驚嘆すべきはアドリブなのに一瞬たりとて止まっていないこと。打つと同時に空く場所を見つけてパンチを打ち込み、それを繰り返していく。いずれのパンチも当て切り、バランスを崩していないためダメージを伝えやすい。

練習でやってきたことしか出ない

　立ち上がってくるのがやっとのクエジャルに、今度は左ストレートと思わせておいてロングレンジの左フックでロープ際に吹っ飛ばし、ワンツーで仕留める。この左フックが事実上のフィニッシュブローであった。

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「ボディーもそうなんですけど、真ん中のパンチが効いていて相手の意識がだいぶ真ん中に行っているなと感じました。だから前の手だけパンと出して（左は）外から。自分の頭を逆側に動かすことで（目を）追わせられれば余計に見えづらい。そこはうまくいったんじゃないかって思います。ポイント、ポイントでパンチをしっかり当てるということは練習から意識してきたことではありました。練習でやってきたことしか出ないとは思っているので」

　練習でやってきたことと、アドリブと。

　一見相反していそうだがまったくそうではない。想定外を想定内にする実戦練習の日々がパターン化ではなく、あまたの引き出しを中谷に備えさせ、応用を広げるアドリブを可能としているのだと断言できる。

　試合後、ルディ・トレーナーからは「グレートジョブ」と声を掛けられたという。

　ロサンゼルスでの猛トレーニングなくして今回のアドリブもきっと生まれなかった――。

＜後編に続く＞

#2に続く

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