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「藤井なら驚かないですね」師匠が笑い、強すぎる王将・藤井聡太は「充実感」、「どこが勝負所か」と永瀬拓矢は嘆くも…名人戦が楽しみなワケ 

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勝又清和

勝又清和Kiyokazu Katsumata

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photograph byJIJI PRESS

posted2025/04/06 11:01

「藤井なら驚かないですね」師匠が笑い、強すぎる王将・藤井聡太は「充実感」、「どこが勝負所か」と永瀬拓矢は嘆くも…名人戦が楽しみなワケ<Number Web> photograph by JIJI PRESS

王将4連覇を果たした藤井聡太。名人戦でも相まみえる永瀬拓矢ら各棋士はその強さをどう捉えているか

「藤井さんは勝ちたい、タイトルを取りたい、よりも、強くなりたい、将棋の真理を知りたいという思いが強いのでしょう。羽生さんもそうですよね。だから駆け引きなんて考えないのでしょう。雁木で戦う準備ができたから採用しただけでしょう」

 なるほどなあ。△3四歩で戦う準備ができた。それを最高の相手にぶつけてみようと思っただけなのか。それを藤井猛、佐々木慎の解説付きで、現場で見ることができて、本当に良かった。

 それにしても、初めてのダイレクト雁木で完全試合とは……なんともはや。

永瀬「どこが勝負どころだったか」と嘆いた

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 対局中の凄まじい緊迫感とは裏腹に、感想戦は例によって和気あいあいとしている。何度も両者は笑い、藤井は駒台の駒をクルクルと回した。しかし調べても調べても、永瀬に色よい変化が出てこない。永瀬は「どこが勝負所だったかわからないですね」と嘆いた。

 いつにもまして藤井の口調は早いが、永瀬は難なく理解し手を進める。駒を動かさずに口頭のみで感想戦をしたかと思えば、局面を戻してまた並べ直す。いつまでも続けそうな雰囲気だ。藤井猛も佐々木も口を挟まない。リスペクトしあっている2人だけの世界だ。

 とはいえこの後、藤井には王将防衛の記者会見がある。藤井猛が「もうそろそろ」と立会人の最後の仕事をし、王将戦が幕を閉じた。

 2024年度の藤井は、伊藤匠七段に叡王位を明け渡したが、そのほかの七冠すべてを防衛した。羽生善治九段は七冠達成の翌年は、棋聖を三浦弘行九段に、竜王と名人を谷川に奪われ四冠となっていた。藤井がどれだけの偉業をなしているかわかるだろう。

 そしてこの二人の戦い、次はついに名人戦だ。

 永瀬は敗れたとはいえ、後手番をもって1勝したのは価値が高い。何より藤井と初めて2日制で戦えたのは大きな経験となったろう。

 春がやってくる。名人戦が楽しみだ。〈将棋特集:つづく〉

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「こ、ここでか!」王将・藤井聡太22歳に棋士達が震えたのは“プロ9年で初の2手目”だけでなく…「2回も驚いちゃったよ」「雁木の専門家みたい」

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