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「藤井なら驚かないですね」師匠が笑い、強すぎる王将・藤井聡太は「充実感」、「どこが勝負所か」と永瀬拓矢は嘆くも…名人戦が楽しみなワケ 

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勝又清和

勝又清和Kiyokazu Katsumata

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photograph byJIJI PRESS

posted2025/04/06 11:01

「藤井なら驚かないですね」師匠が笑い、強すぎる王将・藤井聡太は「充実感」、「どこが勝負所か」と永瀬拓矢は嘆くも…名人戦が楽しみなワケ<Number Web> photograph by JIJI PRESS

王将4連覇を果たした藤井聡太。名人戦でも相まみえる永瀬拓矢ら各棋士はその強さをどう捉えているか

「突いた、流石ですねえ」

 全員でうなる。手順に飛車が7筋に回り、飛車の前の視界を開け、飛車を切ってフィニッシュ。終局時刻は18時55分。4勝1敗で藤井は王将戦4連覇を達成した。タイトル通算28期、谷川浩司十七世名人を抜いて歴代単独5位となった。

 強すぎた。それしかない。

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 角を中央で小刻みに動き、相手の動きを制しつつ角のニラミで攻めをつなぐ。飛車は右に左に自在に動き、最後は切り飛ばして決める。まるで一本のストーリーのように無駄がない。指し手の組み合わせが絶妙すぎてマネができない。

藤井猛「見えているところが違うよね。いいなあ」

 もちろん永瀬の粘りも称賛されなければならない。88手目、藤井が銀を出たところでは、終局は遅くないと見られていた。そこから2時間近く、30手以上も粘った。相手が藤井でなかったら、もっと粘れていただろうし、その中で相手が間違える可能性も高い。佐々木が「角桂を取られても、じっと飛車を引いたのは流石だったですよね」と永瀬の見切りをたたえ、藤井猛もうなずいた。

 藤井猛は「一番印象に残った手は△7五歩ですね」と言い、「見えているところが違うよね。いいなあ」とため息をつきつつ笑った。

「シリーズを振り返ると、第1局から難しい局面の多い将棋が続いたかなと感じているので。指していて充実感というものもありましたし、結果を残せたことも嬉しく思っています」

 終局後に行われたインタビューで藤井は答えた。

 一方の永瀬は終局後、2手目△3四歩についての感想をこう述べた。

「開幕戦あたりは意識していたが、本局は意識が抜けていたので準備不足だったかなと思います」

藤井さんは…羽生さんもそうですよね

 年始のインタビューで藤井は、「面白いと思える形があればチャレンジすることも視野に入れていきたい」と変化を示唆してはいた。だがこの王将戦、また増田康宏八段との棋王戦の後手番4局は変わらず2手目△8四歩で勝ってきているわけなので、永瀬のみならず△3四歩などを意識することもなかった。私は永瀬から「研究会では△3四歩を指されたことがありますので」と聞いていたが、この状況で投入してくるとは、彼も思っていなかっただろう。

 藤井は3勝1敗と追い込んでおり、負けても次は先手番という余裕がある。さらには名人戦でも永瀬と対戦することが決まったという状況だ。藤井にとってそういう状況は関係なかったのだろうか。

 先日、1000勝を達成した森下卓九段に伺うと、こんな言葉が返ってきた。

【次ページ】 永瀬「どこが勝負どころだったか」と嘆いた

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