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「ミウラはクレイジーだ」「お酒も一切飲まないし」フランス権威誌が仰天…カズ58歳のストイック生活「練習ではガチで削ってきますし」
text by

田村修一Shuichi Tamura
photograph byKiichi Matsumoto
posted2025/06/14 17:04
58歳となった三浦知良。昨夏発行された『フランス・フットボール』誌のインタビューに応じた
「出場した試合数(9試合)にしたら満足いくものではないけれども、そこで戦える喜びというのは……。人として学ぶことが多かったし、決してプロの世界として環境のいい場所ではなかったけれども、みんなが上を目差してガチンコでやっている。その中で自分が精神的にも肉体的にも鍛えられたのはありました」
グラウンドに入ればガチで削ってきますし
カズがどんな選手であるかは、受け入れる側もよくわかっていた。そもそも齢55歳のプロサッカー選手が世界に存在すること自体が信じられないのに加え、その選手が自分たちの街のクラブにやって来る。選手やスタッフはもちろん、クラブ、サポーター、市民まで含め、誰もがカズの加入を固唾を飲んで見守った。
「彼らも僕の経歴は、ちょっと異常な長さだということも含めて、日本代表やイタリアに行ったこと、ブラジルで育ったことなどをリスペクトしてくれました。でも、いったんグラウンドに入ったら、そのリスペクトはないんです。ガチの競争で削ってきますし、一番仲の良かったアフリカ系の選手も、抜かれればファウルで止めてくる。グラウンドの上では忖度がまったくない。そういうところも凄く新鮮で良かったです。
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コーチや監督も、ユースの選手に言うような感じで僕にも指示を出してくる。『ミウラ、あっちに行け!』『こっちに行け!』『ここにいろ!』『壁に入れ!』などと言われて、終いには頭をなでられた(笑)。そのときに『何やってんだ。人の頭をなでて。お前ら10いくつも歳下だろ』と思う反面、嬉しかったりもするわけです。そんなこと日本ではないですから。ブラジルでプロになりたての頃に、子供扱いされたときのことを思い出して、それはそれで楽しくて幸せでした。
あれで試合に出られたら最高だなあと。ただ、1年半やってみて、僕が理想とする出場機会はないなと思った。プロとしてはもっと試合に出られるところにもう一度行きたいという気持ちになったので……」
ちょっとフランス語を教えてもらったりして
カズが最初にヨーロッパ移籍を果たした1994年(ジェノアFC)、ヨーロッパにおけるクラブの外国人枠は2人に限られていた。
本当のエリートしか移籍できない。そんな時代が長く続いていた。ボスマン裁定により、EU所属選手に移籍の自由が認められるようになったのは翌年12月のこと。そこからクラブの多国籍化が始まった。

