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「もしかしたら兄貴の本当の狙いは…」アントニオ猪木の実弟が振り返る「日本プロレス史上最大の謎」“舌出し失神事件” 42年目の真実 

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欠端大林

欠端大林Hiroki Kakehata

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photograph byHiroki Kakehata

posted2025/03/19 11:07

「もしかしたら兄貴の本当の狙いは…」アントニオ猪木の実弟が振り返る「日本プロレス史上最大の謎」“舌出し失神事件” 42年目の真実<Number Web> photograph by Hiroki Kakehata

晩年のアントニオ猪木と実弟・啓介さん。啓介さんが振り返った42年前の「事件」の真実とは何だったのか

「失神事件」から2カ月後の8月。不穏な空気が漂っていた新日本プロレス内で「クーデター事件」が勃発する。株主総会で猪木は社長の座を追われ、新間寿氏は追放。タイガーマスクは電撃的な引退を表明した。

 8月28日、約3カ月ぶりの復帰戦となった田園コロシアムでの試合で、ラッシャー木村を下した猪木は、マイクを握ると乱入してきた維新軍に向かってこう絶叫した。

「てめぇらいいか、姑息なマネをするな! 片っ端からかかってこい。全部相手にしてやる! 俺の首をかっ切ってみろ! 藤波だって、坂口、おまえもだ!」

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 啓介氏が語る。

「真のエースは誰なのか。お前らごときが俺を超えられるわけがない。俺抜きでやれるもんならやってみろと。兄貴のそういう思いが、あの失神事件の本質ではなかったのかなと私は思っています。当時のリング上には、そうした選手たちの“本気の思い”がありました。兄貴はプロレスを通じて、自分の生きざまを見せていたのだと思います」

 猪木はその後、人生最大とも言える危機を乗り越え、新日本プロレスの社長に復帰。団体のエースであり続けた。長州や前田らは騒動を機に新日本を去ったが、その後、彼らの団体は崩壊している。

アントニオ猪木の「完全犯罪」の行方は?

 昭和プロレス史の伝説「舌出し失神事件」から42年の月日が経過した。

 あの日、誰にも知られることなく計画を完遂したアントニオ猪木の「完全犯罪」は、いまなお検証者の追跡を許さない。だが、実弟の語る「兄貴の実像」からは、プロレス界のカリスマであったアントニオ猪木の強烈な自我が垣間見えることも確かだ。

 啓介氏は語る。

「何ごとも言葉で語るのではなく、肉体をもって語らしめるというのが兄貴の哲学でした。失神事件も、その解釈はもっぱら、ファンの皆さんに委ねられているのではないでしょうか。いつか、私も兄貴の元へ行く日が来るでしょう。そのときは真っ先に聞きますよ。“ところで何で失神したの?”とね(笑)」

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「プロレス史上最大の謎」42年前のアントニオ猪木“舌出し失神事件”の真相を追う…実弟が語った衝撃の真実「病院着のままの兄貴と美津子さんを…」

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