テレビに映らない大谷翔平:番記者日記BACK NUMBER
「デコピンっていうんですけど」大谷翔平が米メディアの質問に笑顔だったが…その後、番記者はなぜ「質問の仕方を間違えた!」と悔やんだか
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柳原直之(スポーツニッポン)Naoyuki Yanagihara
photograph byMLB Photos/Getty Images
posted2025/03/22 11:01

2023年のア・リーグMVP発表時の大谷翔平とデコピン。ドジャース入団会見でもメディアから質問が
FOXスポーツの記者が「テレビに映って以後、あの犬の名前を世界中の人が知りたがっている。待ち切れないよ」と質問したのだ。会見場は笑いに包まれ、大谷も白い歯を見せて「ふふっ」と笑いながら、こう答えた。
「デコピンっていうんですけど。こちら(米国)の人はあまり発音的に難しいというかあれなので。元の名前はデコイ(Decoy)というので、こちらの人に説明するときは呼びやすいデコイで紹介しています」
事前に用意した質問か、デコピンを聞くべきか…
恥ずかしながらその時の私は、愛犬の犬種が狩猟犬であり、デコイ(Decoy)は「狩猟の際のおとり」という意味であることも、一般的に犬はブリーダーが付けた名前に発音が近い名前を付けることが多いことも知らなかった。
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しかし、「デコピン」という言葉だけは、ハッキリと聞き取れた。大谷は人をからかうときに中指で相手の額でこをはじく「デコピン」が好きで、日本ハム時代から同僚の選手たちによくやっていた。だから犬の名前を聞いたとき、その「デコピン」が由来なのかもしれないと思った。
会場が沸きに沸いたこの質問の直後、私が指名された。念が通じたようだが、なんというタイミングだろう。
事前に用意してきた質問はいくつもあった。「打者としての来季開幕への思い」「投手復帰の見通し」「移籍交渉中にロバーツ監督が面談した事実を公表したことについて」など、どれも127日ぶりのメディア対応の席で聞きたい質問ばかりだ。
しかし会見場は今、大谷の愛犬の名前が「デコピン」(Decoy)だと公表されたことで沸いている。この流れを崩すのはもったいない。だが、質問は原則1人1問のみ。熟考し直す時間もない。ここはとっさに判断しなければならなかった。
「質問の仕方を間違えた!」と思ったワケ
私は意を決して、用意してきた質問の最後に「デコピン」を併せて質問した。
柳原「来年は打者に専念されるということで、まず開幕に間に合うのかというところ。また、今年より素晴らしい成績を残してほしいという期待が多く集まると思いますが、そこへの思いをお聞きしたいです。そして、もうひとつ。今おっしゃられたデコピンの由来を教えていただければ幸いです」