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「えっ、鉄柱が折れた?」まさかの理由で試合中止…それでも「ファンに大好評」だった新日本プロレスの“神対応”とは?「オーカーンっていい人ね…」
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原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2025/03/12 17:30
3月7日、新日本プロレスの後楽園ホール大会は鉄柱が折れるという異例の事態で試合が中止に。写真は折れた鉄柱と社長の棚橋弘至
「鉄柱事件」はファンに好印象をもたらした
1日遅れて『NEW JAPAN CUP』が始まった(優勝戦は3月20日、長岡)。7日の公式戦2試合が8日のカードに組み込まれた。ファンによる優勝者予想1位の上村優也はSANADAを倒して順当に勝ち上がった。前年優勝者の辻陽太はディック東郷に粉をかけられてEVILに敗れてしまった。期待の大岩陵平はチェーズ・オーエンズに勝った。そしてゲイブ・キッドはタイツのお尻に「闘魂」まで入れて、パイルドライバーで成田蓮に勝利し、乗りに乗っている。
棚橋は「ボクが社長の時にこんな初めてのことが起きる」とボヤいてはいたが、「鉄柱事件」はファンにいい印象をもたらした。
新日本プロレスにいい風が吹き始めている。
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話は前後してしまうが、新日本プロレスは3月6日に大田区総合体育館で53回目の旗揚げ記念日を迎えた。試合に先立ち、2月に帰らぬ人となったグラン浜田、西村修の追悼10カウントが行われた。
棚橋は後藤のIWGP世界ヘビー級王座に挑戦したが、引退へのカウントダウンが始まっている棚橋の体力はかなり落ちているのが分かった。もう以前のようにスピーディに動くことはできない。それでも棚橋は積み重ねたキャリアという武器で戦いを続けた。
「現在、自分のコンディション、試合内容含めて冷静に考えてみて、今回、後藤選手からの指名がなければ、IWGP世界ヘビー戦線になかなか戻ることは難しかったかもしれません」
結果は後藤に記者会見で「棚橋さん、IWGP世界ヘビー級のベルトは遠いぞ!」と言われた通りになってしまった。たぶん、これが棚橋のIWGP最後の挑戦ということになるだろう。棚橋は3カウントを奪われて、なかなか起き上がれなかった。
「一番になりたい。ベルトを取って、日本全国回って、ファンの人と喜びを分かちあって、『愛してまーす』で締めてみたいな」とも棚橋は言っていたが、届かなかった。
時代は変わろうとしていた。リング上には新日本本隊とCHAOSのメンバーが集合した。
後藤が言った。
「棚橋さん、あなたがいなかったら、オレはもうちょっと早く、このベルトを巻けたかもしれない。そんなことを思ったりもしましたが、あなたがいなければ、今のオレはありません」
後藤は3月15日、愛知県体育館でベテランの永田とIWGPをかけて戦う。
その勝者が4月5日に、両国国技館で『NEW JAPAN CUP』の優勝者と戦うことになっている。





