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「えっ、鉄柱が折れた?」まさかの理由で試合中止…それでも「ファンに大好評」だった新日本プロレスの“神対応”とは?「オーカーンっていい人ね…」
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原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2025/03/12 17:30
3月7日、新日本プロレスの後楽園ホール大会は鉄柱が折れるという異例の事態で試合が中止に。写真は折れた鉄柱と社長の棚橋弘至
リングの床に近い一番下にはリングを支える金具が張ってあり、それが切れたことはあるが、鉄柱そのものが折れたのには初めて出くわした。投げ技の衝撃を緩和する役目のスプリングは、1987年に行われた藤波辰爾vs.木村健吾のワンマッチ興行では「決闘」ということで抜かれたこともある。
過去にFMWなどの他団体では、悪天候でリングが届かなくなり、急遽、体育館のマットで試合をしたことはあった。だが、今回は鉄柱が折れたのだ。
「オーカーンって、いい人ね」サービスに徹した選手たち
この日、同時刻にお通夜だった西村修のいたずらなんじゃないのか、という声を何人かから聞いた。いたずらが好きだった西村を知っている人の発言だ。西村は真面目だったが、いたずらは大好きだったからだ。
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試合がないのがわかっても、せっかく来たんだからと9割近いファンが客席を埋めた。鷹木信悟ら出場予定がなかったレスラーも電話で呼び集められて、試合中止のお詫びとして、来場してくれたファンへのサービスが始まった。
今回の「お詫び」のファンサービスはすごく好評だった。ファン感謝デーでもここまでやらないだろうというくらい、レスラーはサービスに徹した。まず、不測の事態が生んだノーロープのリングをファンは歓迎した。ユニットごとの写真撮影会があったが、レスラーたちは四方の客席にポジションを変えてポーズを取った。ロープという障害物がないとこんなに楽に写真が撮れるんだということをファンは感じ取っていた。
「新日本の支配者でもあるから」と理由づけをして、グレート-O-カーンも丁寧にサービスに努めた。「ポーズも今日しか撮れないものを」とユナイテッド・エンパイアのメンバーたちに説明してポーズを決めた。さらに通路を上がって客席も回っていた。
「オーカーンって、いい人ね」という声が聞こえてきた。
撮影会が終わると、棚橋、後藤、永田裕志らとヤングライオンたちのトークイベントが続いた。
ふたつ目のトークイベントはロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンだったが、内藤哲也もマイクなしの地声で対応した。
18時半から20時50分。ふだんの試合と変わらない長時間のイベントに、ファンは満足気だった。
最後は棚橋がガウンを脱ぎ、ポーズを披露。前日に叫べなかった「愛してまーす」で右腕を突き上げた。
予期しない出来事にどう対応するかは難しい。だが、今回は来場した人のほとんどが満足できたのではないだろうか。試合は見られなかったが、レアな出来事とレアな無料イベントの参加者になれて、ラッキーだったはずだ。3月8日のチケットを持っていた人はさらに笑顔だった。





