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「非体育会サークル出身」でも大阪国際女子マラソンで“日本歴代10位”の衝撃…23歳の新ヒロイン・小林香菜とは何者か?「大学ではジョグしか…」
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山崎ダイDai Yamazaki
photograph byJIJI PRESS
posted2025/03/02 11:00

1月の大阪国際女子マラソンで日本歴代10位の好記録で日本人トップに入った大塚製薬の小林香菜。23歳の新星にはほかのトップ選手とは異なる異色の経歴が
「10kmあたりからずっとキツかった」と本人が振り返るように、そもそも小林の前評判もそこまで高いわけではなかった。優勝候補に挙げられていたのはパリ五輪で6位入賞を果たした鈴木や、松田瑞生(ダイハツ)といった世界大会の経験もあるランナーたち。15km付近では給水でほかの選手と激しく接触するアクシデントもあった。本人は「痛みで疲労が紛れました」と苦笑したものの、その影響もゼロではなかっただろう。
解説を務めた渋井陽子や福士加代子といった往年の名ランナーたちも「ちょっと苦しいですね」と小林の遅れをそれほど驚きなく受け止めているように見えた。
誤解を恐れずに言えば、自他ともに認める「予想通りの遅れ」だったといえるのかもしれない。
「粘って、最後までいければ…」
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一方で、そのメンタリティにはプラスの面もあった。
ある意味、レース前の想定通りの展開なのだ。先頭から遅れたとて、心折れる必要はない。このまま落ち着いてペースを刻んでいけばいい。シンプルにそう思えていた。
「集団から遅れはしましたけど、あんまり『前を追おう』みたいな考えはなくて。とにかく粘って、このまま最後までいければいいなという発想でした」
そんな柔軟な考え方が奏功したのか、1kmごとのラップタイムも3分20秒前後からそこまで落ちることはなかった。こうなった以上、勝負云々は度外視するしかない。相手がどうこうよりも、まずは自分のペースを刻み続けること――それだけを意識していたという。
ところが、である。そんな思いで5kmほど走っていると、予想外の展開が起こった。
まずは前を行っていた伊沢の姿が近づいてきたのだ。そしてそれは、日本中の度肝を抜くことになる小林のシンデレラロードの幕開けでもあった。
<次回へつづく>
