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ラグビーPRESSBACK NUMBER
「ミーティングは4時間」「納得してもあえて反論する選手も」なぜ桐蔭学園はいまラグビー界で圧倒的なのか…“令和の常勝軍団”の強さの秘密とは?
text by

大友信彦Nobuhiko Otomo
photograph byJIJI PRESS
posted2025/02/26 11:05

1月の全国高校大会で連覇を果たした桐蔭学園の選手たち。現役はもちろん、OBたちも破格の活躍を見せる同校の強さの秘密とは?
桐蔭学園が挑んだ「異例」は戦術だけではなかった。
決勝の前日、桐蔭学園は練習をしなかった。休みにしたのだ。
「天気予報も雨だったし、大阪桐蔭との準々決勝から疲労もたまっていたから」
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藤原監督はそう説明した。しかし、全国大会決勝の前日だ。疲れていたなら時間を短くして、少しでもいいから体を動かし、ボールに触り、選手の体調を確かめておきたい……従来ならそう考えるのが常識だった。だが桐蔭学園は、決勝前日、グラウンドに一歩も出なかった。
そのかわりに行ったのが、徹底したミーティングだ。決勝前日のミーティングは「2時間くらいを2セット」と申主将。あわせて4時間。そう聞くと「長いなあ」と思う方が、もしかしたら「長すぎるんじゃ?」とネガティブな印象を持つ方もいるかもしれない。だが申主将は「いつも通りです」と言った。
桐蔭学園「圧倒的な強さの秘密」は?
桐蔭学園の強さの源は、このミーティングにこそある。
スポーツチームのミーティングといえば、多くの人が想像するのは「戦術の確認」だろう。監督や担当コーチがゲームプランを提示し、試合で使う戦術を選手に授ける。だが桐蔭学園のミーティングでは選手が主役だ。ゲームプランを実際の試合でどう遂行するか、実際の試合ではどんなことが起こりうるかを選手全員で話し合う。
ゲームプランも戦術も、監督から一方通行で伝達されるのではなく、話し合いのたたき台であり、ミーティングでは多くの選手が平等に意見を口にする。藤原監督は、聞いていて何かが足りないと思ったとき「こういうときはどうなる?」と問いかけてより深い議論を促す。
帝京大を主将として4連覇に導いた青木恵斗は、桐蔭学園時代のミーティングをこう振り返った。
「みんなで意見を出し合いました、言い合いみたいになることもあったけど、思っていることをしっかり出し合うことで、試合では想定外のことがなくなった。風が強かったら、ここを止められたら……とプランをいくつか出し合って、議論を重ねて、こういう場面ではこうする、という判断基準を全員が理解していました。その経験は帝京大に来てからも生かしています」
ミーティングで話し合ったのは戦術だけではない。
「戦術以外について話すこともありました。ラグビーだけでなく、相手校の歴史や校風、学校行事にどのように力を入れているかとか、何人かが調べてミーティングでプレゼンして、みんなで相手チームのキャラクターを学んだりしました」