- #1
- #2
ラグビーPRESSBACK NUMBER
「ミーティングは4時間」「納得してもあえて反論する選手も」なぜ桐蔭学園はいまラグビー界で圧倒的なのか…“令和の常勝軍団”の強さの秘密とは?
text by

大友信彦Nobuhiko Otomo
photograph byJIJI PRESS
posted2025/02/26 11:05

1月の全国高校大会で連覇を果たした桐蔭学園の選手たち。現役はもちろん、OBたちも破格の活躍を見せる同校の強さの秘密とは?
初の単独優勝を果たした2019-2020年度は、3回戦で埼玉から出場した県立浦和と対戦した。単純に戦力を分析すれば桐蔭学園の優位は動かなかった。だが、そんな学校がここまで勝ち上がったのには理由があるはず――藤原監督の提案で2年生部員がそれを調べ、まとめ、試合前日のミーティングでプレゼンテーションするというプロセスを踏んだ。
対戦相手へのリスペクトを共有したその試みは、78-5という隙のない完勝に、少なくない貢献を果たした。相手校の歴史に関するプレゼンは、続く準々決勝の大阪桐蔭戦、決勝の御所実戦でも繰り返された。青木や佐藤、慶大主将の中山、明大副将の秋濱という今季の大学4年生は、それを高校2年生で経験した世代だった。
あえて「納得していないふり」で反対する選手も
結論ありきのミーティングをいたずらに重ねているわけでもない。
ADVERTISEMENT
中には、本当は納得しているのに、あえて納得していないふりをして疑問あるいは反対意見を唱える選手もいたという。上級生が誰も意見を言わないと、下級生はなおさら意見を言えなくなってしまうからだ。同じように、自分の意見が無条件で通り過ぎるのを避けるため、あえて発言を控えたと話す主将もいる。
「桐蔭学園の部員は、全員が、日本一になるつもりで入ってくる。常に負けが許されない。チームの中でできる選手とできない選手がいたら、できる選手に合わせるのがスタンダードです」と言ったのは早大を率いた佐藤健次だ。優勝へのこだわりは早大よりも強かったと佐藤は言う。
そんな意識の高い集団に、世界へ挑むチャレンジャー精神と、徹底したミーティングによる周囲への理解力と想像力、さらに対戦相手へのリスペクトも加味され、黄金時代は築かれ、そして卒業生とともにそのエッセンスがいろいろなチームへ拡散・伝播していく。OBの松島幸太朗はフランスへ挑み、さらにOBの四宮洋平はNZや南アフリカ、イタリアをプロ選手として渡り歩き、女子チーム「東京山九フェニックス」を全国女子選手権3連覇に導き、選手たちをオーストラリアへ、フランスへと送り続けている。
まるで、現役の高校生と歴代の卒業生が、張り合うようにチャレンジを続けている。質的にも、量的にも、世界への広がりという意味でも。
そんな歴史の積み重ねの上に、現在がある。
