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野次馬ライトスタンドBACK NUMBER
平均体重は2年で67kg→77.8kgに…29歳監督率いる神奈川県の野球部が“超フィジカル主義”で甲子園を目指すワケ 目標体重届かず「ベンチ外になる主力も」
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村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph byHidenobu Murase
posted2025/02/20 11:01
29歳の若さで藤嶺藤沢高の野球部を率いる菊地幹監督。チームに一大改革をもたらし、フィジカル重視を打ち出した監督の思惑とは?
「一番はじめに、甲子園出場校の身長と体重のグラフを見せてもらったんですね。慶応、仙台育英、大阪桐蔭など、甲子園で上位に行くチームは、例外なくグラフの右上にいる。当時の藤嶺藤沢は左下の枠外。基準には遠く及んでいませんでした。聞けば福井くんは遠征に行く時にも宿舎にトレーニング機材を持ち込んでいるそうです。これは圧倒的に足りていないと思い、部としてトレーニングの指導をお願いすることにしました」
菊地は藤嶺藤沢の野球部として、大幅な方針転換をするために、選手たちと多く話し合いを持った。神奈川の頂点にいる全国優勝するような高校に勝つためにはどうすればいいのか。負けて何を思ったのか。そもそも全国制覇が目標のチームに、関東大会出場が目標のチームが勝てるのか。おまえたちの目標は何なのか。
「甲子園に行くぞ。神奈川を勝ち抜いて」
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菊地の言葉に選手たちも賛同した。繰り返す甲子園という言葉には気恥ずかしそうにしていたが、しかし、目標を上方修正した以上、これまでと同じというわけにはいかなかった。
チームカラーを一新…OBからは反発も
野球部には長い歴史がある。歴史があるということは、伝統的な慣習やしきたり、考え方というものが培われてきている。
藤嶺藤沢は特A級の選手が滅多に来るような学校ではないからこそ、部員全員に分け隔てなく野球をしっかり教えるという伝統があった。
菊地はこれを一新する。20代の若い監督が、藤嶺の野球をフィジカル中心のチームに一新し、一軍から三軍までのクラス分けをして、試合に勝つための体制に作りかえる。当然、OBなどからの反発は起きた。
「皆さん、藤嶺藤沢の野球部に思い入れのある方たちばかりですから当然だとは思います。その中でも、いろんな指導者の方に、お話を聞いて回ったのですが、静岡高校の池田新之介監督に『指導者はその経験則に応じて感じることが違う。今の自分の感覚と20代の菊地監督との感覚は絶対に違うから。今思った自分の直感を信じて引っ張れ』と頂いた言葉で、吹っ切れたというか、今自分にできる精一杯をやるだけやってみようと思うことができました。
現状を変えるためには熱量が必要なんです。自分の役割はチームのエネルギーや活気を高めること。僕は自分一人では何もできない。いろんな人の助けを借りなければいけないんです。そのためには、自分が先頭に立って熱量を出していかなければいけませんから」
菊地は各所に頭を下げながら、勝つために必要なことをひとつずつ取り入れていった。
フィジカルの専門家、そして、学校の制度上、特待生は望めないが、少しでもいい選手が興味を持ってくれるように、広報活動の専門スタッフを入れた。そのスタッフによる方策のひとつが、冒頭に挙げた野球部インスタの開設である。
2023年の冬。すべては勝つために。革命は始まった。


