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吉田知那美「泣きそうになりました」日本選手権はチケット完売、カーリングはなぜ“視聴率の取れるスポーツ”になったのか? 観客を生む「2つの要素」
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松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2025/02/15 11:02
日本選手権では準決勝敗退となるも、代表決定戦への進出が決まったロコ・ソラーレの藤澤五月と吉田知那美
カーリング人気を生み出す「2つの要素」
オリンピックごとに大きな注目を集めることについて、平昌五輪から帰国後、ロコ・ソラーレの吉田夕梨花がこう語っていた。
「カーリングは4年に一度のスポーツと言われています。常に注目していただけるスポーツにしていきたいです」
ただ、オリンピックごとであっても、さまざまある競技の中で強い関心を持たれてきたことは事実だ。
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その理由には、大会ごとに注目を集める選手がいたという事実があるだろう。トリノ五輪では小野寺、さらには本橋もブームを引き起こした。ロコ・ソラーレも個性ある選手たちがそろう。
それとともに、競技そのものの特性も、関心を持たれる要因となっている。
横浜の会場では、選手がストーンを投じる合間、「次はここに投げてこうしたら」「こっちがいいんじゃないか」、あるいは「どうしてこっちに投げたんだろう」といった会話が観客席でしばしばなされていた。
例えばプロ野球でファンが投球を予測したり作戦を予想したりするように、プレーに「間がある」からこそ、カーリングも見ながら考えて参加する余地を持つ。競技に入りやすいとも言える。オリンピックでの数字や関心の高さの裏付けからのみならず、カーリング自体に見る(観る)スポーツとしての可能性を感じる意見も何度か耳にする。
日本選手権で見られた“ある光景”
それに一見オリンピックごとの盛り上がりであるかのように思えても、継続していれば関心を持つ人も増えてくる。酒巻氏は横浜大会を振り返りつつこう語っている。
「ナイスプレーをしたときの観客の声援や拍手、我々が思っている以上に観客の皆さんはカーリングのことを分かっていると思うアクションがありました」
前売り段階で完売するほどだったのも、「見たい」と願う人々が増えてきていたからにほかならない。
実は本橋も、吉田夕梨花と同様の言葉を発しつつ、こう語っていた。
「4年に一度のカーリングと言われているのを、しっかり根付く努力をし続けないといけない。選手と協会一丸で、この競技の素晴らしさを伝えていくことが大事だと思います」
ポテンシャルがあっても、いかす機会がなければ発揮されない。多くの人が足を運びやすく、そしてメディアでも連日数多くの記事で取り上げられる効果のあった首都圏での開催は、そういう意味でも意義あるものだったし、見る(観る)裾野を広げていけば、それは競技の普及にもつながっていく。
何よりも試みを成功に導いた要因は、白熱した試合を繰り広げた選手たちにある。女子決勝ではフォルティウスと北海道銀行の相譲らぬ戦いがあり、男子でもロコ・ソラーレとコンサドーレによる準決勝、ロコ・ソラーレとSC軽井沢による決勝と、ともに最後はどちらのチームのストーンがナンバーワンか肉眼で判断できず、メジャー計測で勝負が決する激闘が繰り広げられた。
選手たちの奮闘もあっての成功であった。

