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「うわ、坂本やん」鮮烈甲子園デビューも“わずか6年”で戦力外通告…阪神ドラ1左腕に突きつけられた現実「その後は球団職員を1年で辞めて…」
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栗田シメイShimei Kurita
photograph byJIJI PRESS
posted2025/02/14 11:08

一軍初登板となった甲子園での巨人戦。勝ち星こそつかなかったが、活躍を予感させるピッチングだった(2015年)
21UW杯に出場したことや左胸の炎症の影響で出遅れた横山は、二軍でキャンプインする。
ただ、“阪神ドラ1”という注目度は、山形や鹿島で過ごしてきた横山の想像を絶するものだった。話す言葉が新聞の1面となり、番記者達は横山の一挙手一投足に注目した。街を歩いても、知らないファンから話しかけられるということが日常となる。
だが、浮き足立つことはなかったという。それだけ社会人3年目の成功体験が横山に自信と強い信念を植え付けていた。当時の阪神には能見篤史、岩田稔、岩貞祐太、岩崎優ら好サウスポーが揃っていたが、彼らの投球練習に驚きつつ、一方でこんな感覚も抱いた。
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「ピッチャーって自分が投げているボールが分からない。だから、他の投手と比較できないんですよ。でも、バッターの反応は分かる。(プロの打者は)レベルが高いけど、自分のパフォーマンスを出せたら全然プロでもやれるな、という感触は正直ありましたね」
「うわ、坂本やん」巨人戦で圧巻デビュー
一軍初登板は、2015年5月21日の巨人戦。場所は高校時代に打ち込まれた苦い記憶がある本拠地・甲子園。この日は、不思議と気負いや過度なプレッシャーは感じなかった。
初回からストレートの走りは抜群だった。カーブも大きな放物線を描き低めに決まる。イニングを重ねても体に疲労もない。高校時代のリベンジと目した1戦は、絶好調だった。
「キャッチャーミットまでの距離が凄く近く感じた。本当に18.44mあるのか、というくらい。うわ、坂本やん! 長野や! 亀井やー!と思いながら投げてましたが、打たれる気はしなかった。気がついたら7回を投げ終わっていたんです」
7回1失点で勝ち星はつかなかったが、デビュー戦で強烈な印象を球界に残す。しかし、プロの世界は甘くなかった。