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「腫れた目と傷…井上尚弥の破壊力」韓国人キム・イェジュンの挑戦はやっぱり無謀だったのか? 英国人記者が辛口評価も「もう誰も恐れる必要ない」 

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杉浦大介

杉浦大介Daisuke Sugiura

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2025/01/26 11:31

「腫れた目と傷…井上尚弥の破壊力」韓国人キム・イェジュンの挑戦はやっぱり無謀だったのか? 英国人記者が辛口評価も「もう誰も恐れる必要ない」<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

井上尚弥の強烈なパンチを物語る、キム・イェジュンの生々しい傷跡

 ほとんどいいところが出せずに敗れたのだから、一人の戦士として、キムはもちろん傷ついているに違いありません。ただ、一方的なKO負けの後でも、井上挑戦はキムにとって価値のあるチャレンジだったとは思います。

 2週間の準備で勇敢にも“モンスター”との対戦を承諾し、興行を救ってくれました。そして、ここで世界最上級のボクサーと戦ったのだから、今後、残りのボクシングキャリアで誰と対戦してももう相手を恐れることはないでしょう。

 長いラウンドにわたって痛めつけられなかったこともポジティブに捉えられるとみます。終盤まで打たれ続けた上で精も根も尽き果てるのではなく、4ラウンド、井上の連打で比較的あっさりと沈んだおかげで、ダメージを溜めなかったはずです。総合的にみて、ここで知名度を上げ、貴重な経験を積んだことは、これから先のキムの人生にプラスに働くのではないでしょうか。

「キムよりも格上のグッドマンだったら…」

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 井上の対戦相手がキムではなく、当初の予定通り、グッドマンだったらどうなっていたかというのは少々興味深い質問です。グッドマンはキムよりもハイレベルの実績を残してきた好ボクサー。私も高く評価していました。手数が多く、動きながらパンチを出せる選手であるがゆえに、井上相手でも長いラウンドを戦えるのではないかと考えていました。

 もちろん井上相手に積極的になり過ぎればカウンターの餌食になるだけに、グッドマン側も多少の戦術変更は必要だったでしょう。おそらく手数は少し控えめにし、ムーブメントを重視して戦っていたのではと思います。

 これまでスーパーバンタム級で戦い続けてきたグッドマンは一定の耐久力を持っていると見るべきです。井上対ポール・バトラー戦、マーロン・タパレス戦のように決着を終盤まで引き延ばすことは可能だったのではないでしょうか。とはいえ、グッドマンが主導権を握れていたとまではもちろん思いません。指名挑戦者相手に、キム戦よりも引き締めて戦っていたであろう井上が徐々にペースを握り、終盤にストップに持ち込むというのが私の予想でした。

【次ページ】 次戦はアフマダリエフか、ピカソか

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