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「イノウエと再戦したい」だが表情に浮かぶ本音は…井上尚弥にKOされた“敗者の弁”ドネア39歳「力を知る前に終わった」、キム・イェジュンも…
posted2025/01/26 17:00
text by
NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph by
Takuya Sugiyama
「リベンジできるなら希望するが…」のウラにある本音
<名言1>
再戦? もしリベンジできるのであれば希望するが……。
(アドリアン・エルナンデス/NumberWeb 2014年4月7日配信)
https://number.bunshun.jp/articles/-/809191
◇解説◇
井上尚弥は1月24日の世界スーパーバンタム級4団体防衛戦、12月24日からの延期に加えて直前の対戦相手変更にも動じず、相変わらずの強さで4回TKOを飾った。勇躍挑んで散った韓国人ボクサー、キム・イェジュンが井上戦を受けたことについて「半分冗談、半分本音だが」としつつも「後悔している」と口にしたのは、井上の強さを肌で実感したからこそだろう。
時はさかのぼること11年前、2014年4月6日。20歳の井上はWBC世界ライトフライ級タイトルマッチで王者エルナンデスを6ラウンドTKOで撃破。プロキャリア6戦目にしての世界タイトル獲得は日本最速記録となった。当時の井上はわずか6戦で日本ランカー、日本王者、東洋太平洋王者へと駆け上がっていた。“さすがにまだ世界は早いのでは?”という見立てを破壊するKO劇だった。
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それも相手エルナンデスはWBC世界ライトフライ級王座を2度獲得、計5度の防衛を果たしていた。さらに井上戦までに32戦29勝18KO2敗1分を積み上げた実力者で、28歳とボクサーとして脂の乗った年齢だった。しかし……ゴングが鳴ると井上のハードパンチによって左目をカットして流血。そのまま苦境に陥ると第6ラウンド、飛んできた右フックで撃沈した。
「私の調子はよかったが、ナオヤがグレートだった。スピードがあり、上手にパンチを外すことができる」
エルナンデスが口にした、冒頭発言に続く一連の言葉である。言葉尻だけをとらえれば“また戦いたい”と捉えることができるが……試合後のドレッシングルームにいたライター渋谷淳氏が感じ取ったものは、本気でそう考えている表情ではなかったのだという。初の世界チャンピオンに輝いた時ですら、すでに王者が“噛ませ犬”に見えるかのような強さを誇っていた。
“井上に慄かなかった”誇り高き敗者ドネア
<名言2>
世間では早いラウンドで私が負けると言われていたけれど、自分は勝てると思ってリングに上がった。
(ノニト・ドネア/Number990号 2019年11月14日発売)
◇解説◇
井上は足掛け11年にもわたって世界チャンピオンであり続けている。キム・イェジュン戦で世界戦10試合連続KO勝利、世界戦KO勝利数の「22」はジョー・ルイスに並んで1位タイになるなど、数字もその強さを雄弁に物語る。
そんな井上が初めて追い詰められた一戦といえば、2019年のワールドボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)バンタム級決勝、ノニト・ドネア戦である。