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「可能性しかない」レジェンドが称賛した“スーパールーキー”衝撃の登場…高校3年生の女子プロレスラー・山岡聖怜が大善戦デビューにも涙した理由
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byEssei Hara
posted2025/01/18 11:03
1月3日、プロレスデビュー戦でMIRAIと対戦した“スーパールーキー”山岡聖怜
山岡聖怜はマリーゴールドの“カギ”に?
ロッシー小川は、山岡が今後のカギになると考えている。一つは、生え抜き世代としての期待感だ。現在のマリーゴールドはスターダムとアクトレスガールズからの移籍組が中心。マリーゴールドでキャリアをスタートした選手はまだ少ない。
「ここでデビューした生え抜き選手が中心になった時が、団体の本当の勝負。今はその過程です」(小川)
山岡には、女子プロレスの潮流そのものを担う存在としても期待しているという。「アスリートが入ってくる業界になれば」と小川。ここしばらく、女子プロレス界ではアイドルなど芸能界からの挑戦が目立った。場慣れ、舞台度胸あるいは上昇志向といった面で、彼女たちが“プロレス向き”だったのは間違いない。
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ただプロレスは当然ながらスポーツであり格闘技。柔道やレスリングなどのベースを持った選手の活躍も欠かせない。“本格派アスリート”が脚光を浴び、たとえばオリンピック出場選手のキャリアの選択肢に女子プロレスが入ってくれば、業界はさらに盛り上がる。山岡は、いわばその先駆けだ。
こんな新人、めったにいるものではない
1.3大田区大会、山岡はプロレスラーとして初めての試合でMIRAIと対戦した。スターダム時代に“白いベルト”ワンダー・オブ・スターダム王座を獲得、マリーゴールドでは初代タッグ王者となったトップ選手だ。
とりわけ基本と“受け”のレベルが高いと評価されてきたオールラウンダーのMIRAIと、山岡は公開練習でスパーリング。関節技の攻防で圧倒され、その場でデビュー戦でのシングルマッチを申し出た。
スパーリングの内容に納得がいかない。だから試合で勝ってやる……新人とは思えない気の強さだ。憧れの存在であるジュリアについて、MIRAIが「負けたことがないんだよね」と言うと、山岡は「私が仇を取ります」。
大田区のリングでも、山岡はその負けん気で観客とMIRAIを驚かせた。試合は15分時間切れで引き分け。すると泣きながらマイクを握り、延長戦を要求する。最後は7分14秒、MIRAIのラリアットに沈んだ。とはいえ初めての試合で、トータル22分闘ったわけだ。そんな新人、めったにいるものではない。
目立ったのはやはり、テイクダウンやグラウンドコントロール、関節技の攻防。ジャーマンスープレックスのキレも素晴らしかった。
一方で打撃はかなりダメージがあったようだ。「試合中、下を向いてしまう(相手を見ていない)場面もありました」とMIRAIは指摘する。課題は“プロレスならでは”の部分にありそうだ。
「そうは言っても、デビュー戦とは思えない内容だったと思います。引き分けで終わらず、その先を求めてきたのも凄いこと。けど期待も大きいと思うので、他の選手の何十倍も努力しなきゃいけない宿命なのかなと」(MIRAI)