「心が折れてしまったんです」…《ベルリンで日本歴代7位》女子マラソン“日本の次世代エース”細田あいが語る「もう無理だ」と思った意外な瞬間 

　それでも細田は、陸上を辞めなかった。

　その理由は、「自分以外」の存在が大きかったからだという。自分のためにはもう頑張れなくても、「応援してくれる人たちのため」であれば、走り続けられることを知った。

「自分の気持ちを伝えるために、高校や大学の恩師を訪ねたんです。そこで先生たちに、温かい言葉をかけてもらって、すごく応援してもらえた。その時、目標は自分だけのものじゃなかったんだと……」

細田の「涙のワケ」は…？

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　涙を拭いながら、細田は続けた。

「純粋に、応援してくれる人たちに喜んでもらいたいと思いました。それに、自分も競技に納得できていない。だから、もう1回だけ頑張ろうという気持ちになれたんです。本当に苦しかったからこそ、陸上人生の転換点になりました」

インタビュー中には涙をぬぐう場面も　©Miki Fukano

　その後、2021年にエディオンに移籍してから流れが変わった。トラック、マラソンともに自己ベストを更新する快進撃を続けた。

「あえて環境を変えました。新しくリスタートする、初心から陸上と向き合ってやり直すために、移籍を決断しました」

　移籍以降の主なレース結果は以下の通り。出場したレースの大半で、自己ベストを更新していることがわかる。

・2021年6月　日本選手権5000m　15分28秒05（自己ベスト）
・2022年3月　名古屋ウィメンズマラソン　2時間24分26秒（自己ベスト）（MGC出場権獲得）
・2022年6月　日本選手権5000m　15分23秒75（自己ベスト）
・2022年10月　ロンドンマラソン　2時間21分42秒（自己ベスト）
・2023年3月　東京マラソン　2時間22分8秒
・2023年10月　マラソングランドチャンピオンシップ（パリ五輪MGC）　2時間24分50秒（3位）
・2024年3月　名古屋ウィメンズマラソン　怪我で欠場
・2024年9月　ベルリンマラソン　2時間21分31秒（自己ベスト）

2023年のMGCでは飛び出した一山麻緒（資生堂）を追いかけ見せ場を作った　©Asami Enomoto

　客観視すれば、細田は今、人生で最も世界陸上や五輪の代表に近いところに到達している。一度は諦めかけながらも、小学校の頃に夢見た目標に、着実に近づいている。

　しかし、それでも細田は「近づいているとは思っていない」という。

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