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「何のための補欠だったんだろう」パリ五輪マラソン “補欠問題”で話題に…細田あい(29歳)“その後の快進撃”のワケ「複雑な気持ちはあったけど…」
text by
泉秀一Hidekazu Izumi
photograph by(L)JIJI PRESS、(R)Miki Fukano
posted2025/01/26 11:00
9月のベルリンマラソンで日本歴代7位の好記録をマークした細田あい(エディオン)。パリ五輪「補欠問題」の渦中にいたが、その後は快進撃を続けている
ところが、2月に入って左内側広筋の炎症を起こしてしまう。2~3週間ほど走れない期間が続き、3月上旬の名古屋で日本記録更新の現実味は薄れていった。
「出るべきかどうか、何度も監督と話しました。今はいろんな人の期待も背負っています。結果だけじゃなく、走ることを喜んでくれる人もいる。だからこそ、どんな状況でも挑戦すべきなんじゃないかとも思いました」
一方で、「やっぱり結果を出さないと意味がないと思う自分もいた」とも振り返る。
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「悩んでいる期間は、気持ちが行ったり来たりしていました。何度も自問自答して、最終的には将来のことを考えて『出ない』という決断をしました」
細田が欠場した名古屋で記録は更新されず、パリ五輪の代表は、鈴木優花(第一生命)、一山麻緒(資生堂)、前田の3人に決まった。細田は補欠に選出され、代表選手と同じくパリに向けて調整することになった。
「補欠を受けたからには、正選手と同じ気持ちで準備をすることが役割です。補欠だから、走れないかもしれないから疎かにするのは違う。だから、しっかりと準備を進めていました」
パリ五輪で論争を生んだ「補欠問題」
迎えたパリ五輪。女子マラソンの直前に起こった「補欠問題」が陸上界を揺るがせた。
レース2日前に前田の右大腿骨疲労骨折が判明し、欠場が決まったのだ。
大会約2週間前の練習で違和感を感じるも、強い痛みではなかったため調整を続け、レース5日前の検査でも大きな異常は見つからなかった。疲労骨折と診断されたのは、レース2日前のMRI検査だった。
もちろん前田にとっては無念の決断となったが、一方で正選手の欠場は、補欠選手の出場機会にもなる。
実際、女子マラソンの前日に行われた男子マラソンでは、補欠から繰り上がったエチオピアのタミラト・トラが金メダルを獲得している。
ルールでは、レース前日の午前9時までであれば、補欠との交代が可能。前田の辞退が決まった時点で、補欠の細田との交代は間に合うタイミングだった。
しかし、日本陸連はレースの9日前に補欠を解除しており、細田を登録することはできなかった。
「補欠解除の連絡を受けた時点でベルリンマラソンに向けて切り替えていました。でも、直前でアクシデントがあったと聞いて、色んな感情が湧き起こってきました。正選手がギリギリまで諦められないのは、痛いほどわかります。自分が同じ立場だったら、絶対に悩むから。スタートラインに立つ難しさも名古屋で痛感しているので、より一層、複雑な気持ちになりました」