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「何のための補欠だったんだろう」パリ五輪マラソン “補欠問題”で話題に…細田あい(29歳)“その後の快進撃”のワケ「複雑な気持ちはあったけど…」
text by
泉秀一Hidekazu Izumi
photograph by(L)JIJI PRESS、(R)Miki Fukano
posted2025/01/26 11:00
9月のベルリンマラソンで日本歴代7位の好記録をマークした細田あい(エディオン)。パリ五輪「補欠問題」の渦中にいたが、その後は快進撃を続けている
細田本人もそう複雑な胸中を吐露する。
「『何のための補欠だったんだろう』と思ったのも事実です。正選手の立場も分かるし、補欠としての悔しさもある。どれだけ納得しようと思っても、『走れたかもしれない』っていう気持ちは無くならず、苦しかったです。
すぐに、次のレースに気持ちを向けられたわけではありません。でも、自分が補欠としてしっかり準備していたことを証明するためには、ベルリンで結果を出すしかない。沢山の人に話を聞いてもらいながら、そう考えられるようになっていきました」
ベルリンで好記録、クイーンズ駅伝区間賞…五輪後の快進撃
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パリ五輪から1カ月半後。細田がベルリンマラソンで結果を残したのは、冒頭で記した通りだ。
さらに11月には、クイーンズ駅伝の5区で区間賞を獲得した。全6区間で争うクイーンズ駅伝のうち3区(10.6キロ)に次いで長い5区(10キロ)は、チームの順位に直結する後半の重要区間だ。
各チームともエース格を投入しており、優勝候補だった積水化学は10000mとハーフマラソンの日本記録保持者である新谷仁美、優勝した日本郵政グループは東京五輪マラソン代表の鈴木亜由子、資生堂は東京五輪、パリ五輪でマラソンを走った一山を据えた。
そうした強者揃いの5区を、細田はトップで駆け抜けた。向かい風の中、チームを5位から3位に押し上げる走りで、激動の一年を締め括った。
「私は今まで怪我が多くて結果を出せずに苦しんできました。でも、春先から夏にかけては怪我をせずに走り込めていた。練習を積めれば結果が出る。当たり前のことなんですけど、それが自分は思うようにできてこなかったので。2024年の春以降は、自己ベストだけではなく、怪我をせずに走り込めた経験が、自信になりました」
タイムや実績、どんなレースでも大きく外さない安定感などを考慮すると、今の細田は、世界陸上やロサンゼルス五輪の代表に最も近いところにいる選手の一人だろう。
しかし、そうした趣旨の質問をぶつけても、細田は慎重だ。
「まずは着実に自己ベストを更新していくこと。それが、大きな目標に近づく唯一の方法だと思っています」
こうした細田の姿勢の背景には、ここに至るまでの過程がある。「順調」の二文字とはほど遠く、むしろ陸上を辞めかけたことがあるほど、悩み苦しんできたからだ。
<次回へつづく>