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「引退する前に息子とNBAで同じコートに立つ」40歳レブロン・ジェームズが叶えた“夢”…1年半前、心臓発作で倒れた息子と“奇跡の共演”
posted2024/12/30 11:06
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph by
AP/AFLO
父と同じ職場で働くことになった息子は、父親といっしょの車で“通勤”するかと聞かれると、迷うことなく全面否定した。
「絶対嫌だ。ただでさえいっしょにいる時間が多いのだから、できるだけ遠くに離れていたいよ」
父は、12月30日に40歳の誕生日を迎えるレブロン・ジェームズ。息子は10月6日に20歳になったブロニー・ジェームズ。レブロンが所属するレイカーズが6月のドラフトの2巡目全体55位でブロニーを指名したことで、NBA史上初の父子チームメイトとなった。
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歴史的な出来事であり、ふだんから仲がいい2人が共にチームメイトになったことを喜んではいるのは確かなのだが、ブロニーのこのコメントには20歳前後の息子の本音が見え、普通の父子なのだなと微笑ましく感じた。
とはいえ、彼らがやっていることは“普通”ではなく、特別なことだ。NBA史上で40代まで現役だったのはわずか31人というNBAで、父が40前後まで現役トッププレイヤーとして活躍しているのも稀なことだし、父がまだ現役のうちに息子がNBAに入れる年齢になり、実際にNBA選手になるだけの実力を備えていることも珍しい。同時期にNBA選手になるだけでも史上初なのに、ましてやチームメイトだ。そんな特別なことを、レブロンとブロニーは成し遂げた。
「引退する前に息子とNBAの同じコートに…」
ここまで、まとまった時間で2人が同時に試合に出たのは2回。1回目は10月6日、ブロニーの20歳の誕生日に行われたプレシーズン試合。第2クォーター開始から4分9秒の間、父と子が揃って試合に出た。
レブロンは、試合後にその瞬間のことを聞かれ、「まるで『マトリックス』のようだった」と、仮想空間を描いた映画の世界に喩えた。
18歳でNBA入りして以来、新人王、得点王、アシスト王、MVP、NBA優勝、オリンピック金メダルなど、ありとあらゆる経験をしてきたレブロンだが、NBAの試合での息子との“共演”はさすがに初体験。しかも、2年ぐらい前から「引退する前に息子とNBAで同じコートに立つことが夢」と公言してきたことが実現した瞬間だったのだから、いつも冷静な“キング・ジェームズ”も、どこかフワフワした感覚だったのだろう。