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「引退する前に息子とNBAで同じコートに立つ」40歳レブロン・ジェームズが叶えた“夢”…1年半前、心臓発作で倒れた息子と“奇跡の共演”
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph byAP/AFLO
posted2024/12/30 11:06
息子ブロニー(右)とNBAのコートに立ったレブロン・ジェームズ。父として、チームメイトとして、息子をサポートした
プレシーズンゲームでもそうだったのだから、その半月後の10月22日に公式戦で共に試合に出てきたときは、さらに格別だった。ブロニーが出場するタイミングをあらかじめ告げられていたのか、第2クォーターにいったんベンチに下がったレブロンは、ベンチで隣に座っていたブロニーにアドバイスの声をかけた。
「準備はできているか? 見ていてどれだけ激しいかわかっただろう? でも、考えすぎずにのびのびとプレーするんだ。ミスを心配せず、ただ全力でプレーすればいい」
その数分後に父子揃ってスコアラーズテーブルに交代を告げに行き、並んでコートに入った。息子がNBA選手として公式戦デビューした瞬間に立ち会う。しかも、ただその場にいただけでなく、チームメイトとして助け、直前にアドバイスをする。それは家族を何よりも大切にしてきたレブロンにとって、特別なことだった。
「絶対に忘れない」「クレイジーな瞬間だった」
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試合後にブロニーと共に記者会見場に現れたレブロンは、その瞬間について聞かれると、しみじみと言った。
「この先どれだけ年を取ったとしても、たとえ記憶が薄れていったとしても、あのときのことだけは絶対に忘れない」
ブロニーも同じ思いだった。
「父といっしょにスコアラーズテーブルに行き、いっしょに試合に出たことは、まったくクレイジーな瞬間で、一生忘れないだろう」
ブロニーのNBAデビュー戦は、2分41秒出場して0得点、1リバウンドに終わった。21年前のレブロンのNBAデビュー戦での記録は42分50秒出場し、25得点、6リバウンド、9アシスト、4スティール。もちろん、NBA史上でもトップクラスのグレートプレイヤーである父と比べることはフェアではないし、ブロニー自身、父の背中を追うことを目標としているわけではない。ブロニーの目標は、自分自身の道を進むこと。そして、レブロンもそんなブロニーを見守っている。